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『とうやにいは、こせいがとめられなくなっちゃってもえちゃったんだって。……あのひとと、ちょっとにてる』
紺炉は紅丸と対峙する焔ビトに目を向けた。
Aは自分の手のひらを見つめた。
『わたし、ゆきとこおりのこせいなの。とうやにいのちかくにいたら――わたし、きっとひやしてあげられたのに……』
「……」
『……ねえ、ほうたいのおにいさん。わたし……あのひとひやしてあげられないかな』
紺炉は紅丸に目線を移し、微笑んだ。
「……いいや、それは必要ねえよ。俺たち浅草のモンは、みんな紅に命預けてんだ。自分が死ぬときには紅の手で――そう思って、みんな集まってきてる」
『じゃあ、あのひとはねがいがかなうの？』
「……そうだな、そうとも言えるな」
『……くるしくないのかな』
「今は苦しいだろうよ。でも、すぐに苦しくなくなる」
焔ビトの身体を、紅丸の炎が貫いた。
静かに、灰が舞う。
『……もう、くるしくない？』
「……ああ」
そっか、とつぶやいたAは、破壊された街をぼうっと見つめた。
紺炉はニッと笑って言った。
「な、
誇らしげに笑う紺炉に、Aは少しの間見惚れていた。
『――わたし、ほのおこわいの、ちょっときえたかも。ちょっとだけだけど』
「はは、それなら良かった」
Aは、風に舞う灰に祈った。
――もうこのひとがくるしみませんように。
――とうやにいがとおくでわらってられますように。
もう空は星が輝き始めていた。
「あっ、紺炉が帰ってきた！」
「あっ、チビが帰ってきた！」
ヒカゲとヒナタのお出迎えを受け、Aと紺炉は帰ってきた。
双子たちは相変わらず「お前らズルいぞ！」「ヒカとヒナも連れて行け！」と言っていたが、紺炉は「もう鎮魂終わってるぞ」と苦笑した。
4人で夕飯の準備をしていると、後始末まで終えた紅丸が帰ってきた。
「紺炉お前……A連れてきてただろ」
「……バレてましたか」
「本人が炎怖いっつってたろ」
『あっ、でもね、マルバツのおにいさんのほのおはこわくないよ！ とってもきれいだった！』
キラキラの目でそういうAに、紅丸は少し照れ臭そうに口を閉じた。
その様子に、ヒカゲとヒナタは「若照れてやんの」といじりながら紅丸の背中をよじ登った。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
