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浅く荒い息が苦しい。
ギュッと胸元を掴むと、大きな男はゆっくり言った。
「怖がらせて悪かったな。とりあえずゆっくり深呼吸しろ」
『……』
Aは戸惑いながら何度か深呼吸を繰り返した。
少し震えが治まったAに、改めて二人の男は目を合わせた。
「お前、浅草の奴じゃねえよな。誰だ」
『あ、あさくさ……？ え、えっと、わたし……』
「焦んなくてもいい、俺たちは事情が聞きてえだけなんだ」
『……な、なまえは、轟A……5歳……“ゆうえい”でしょうとといっしょにくらしてる……』
小さな小さな声で自己紹介をする。
しかし、その言葉に二人は首を傾げた。
「“ゆうえい”？ 紺炉、聞いたことあるか」
「いいや、ねえな。それってどんなところだ？」
『え、えっと……おっきいがっこうで……“りょう”があって……』
その言葉に、二人は更に首を傾げた。
寮がある大きな学校で“ゆうえい”という名前のところは、思い当たるものが一つもなかったからだ。
紺炉、と呼ばれた大きな男は、もう一人の男に目配せをして首を振った。
――質問を変えましょう。
その考えに難なく気づいたもう一人の男は、また質問をする。
「お前、火の中にいただろ。その火が、一瞬にして凍っていた。それについて心当たりはねえか」
『……たぶん、わたしのこせいが……』
「こせい？」
『……あついの、こわくて……やだっていったら、ぜんぶこおったの……』
「あの氷はお前の能力だってことか？」
「ちょ、ちょっと待て。氷の能力者なんて聞いたことねえぞ。どういうことだ」
頭を抱える二人に、Aは拙い言葉で一生懸命説明した。
途中途中で「その“こせい”ってなんだ」とか「兄貴がいんのか」とか聞かれて、一通り説明し終わる頃には震えが止まっていた。
「とりあえず、なんとなく状況はわかった。信じられねえ話だが――」
「別世界、とかほんとに有り得んのか……？」
「けど、それ以外説明のしようがねえだろ」
眉間にシワを寄せて話し合う二人。
不安そうにキョロキョロするAを見ながら、紅丸は「はあ……」とため息をついた。
「正直わかんねえことだらけだが……お前が悪意のある奴じゃねえってことはわかった。怖がらせて悪かったな」
『……いいよ。マルバツのおにいさんもほうたいのおにいさんも、こわいひとじゃないから』
紺炉はAの呼び方に苦笑いした。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
