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何のことだ、と言うフランキーだが、海を見つめる表情は柔らかかった。
Aはフランキーの優しさに嬉しくなって、一気に警戒を解いた。
『ゴツゴツのおにいさん、かたのっけてほしい』
「肩？」
『うん！ きっとたかいとこからみたほうがきれいだとおもうから！』
抱っこをねだる子どものように(実際そうなのだが)両手を広げるA。
フランキーはひょいっとAを抱え上げ、肩車した。
Aは『わあ……！』とため息をつく。
柵の隙間から見ていた夕日が大パノラマで見えるその光景には、Aの目には世界で一番綺麗に写っていた。
『ゴツゴツのおにいさん！ みてみて！ そらとうみがいっしょになってる！』
「分かったからあんま足バタバタさせんじゃねェ！ 今度こそ落ちるぞ！」
『すごい、こんなのはじめてみた……！』
フランキーの注意も耳に入らないのか、Aは輝くような笑顔で水平線を見つめた。
その様子に、フランキーも嬉しそうに笑った。
Aの興奮が少し収まって静かに景色を堪能し始めた頃、フランキーはそろそろ降ろしてやろうと屈もうとしたが、その前にAが口を開いた。
『……あのね、わたしね、おとうさんたちにきらわれてたんだ』
ただの独り言のようにこぼしたその言葉に、フランキーは目を見開く。
『おとうさん、とってもこわいんだ。いっぱいたたかれたし、いっぱいどなられた……いまでも、すごくこわい』
「おめェ、実の父親にそんなことされ――」
『おとうさんだけじゃないの。おかあさんも、とうやにいもしょうとも……わたしのこときらいだった』
「“しょうと”って、さっき言ってた兄ちゃんか？」
『うん。しょうととわたし、ふたごなの。それで、わたしがゆきのこせいもってるから、しょうとのこせいがよわいんだって、おとうさんいってた』
フランキーは、ぐっと拳を握って眉をひそめた。
――こんな小さな子どもがそんな大きな傷を背負っているだなんて……
フランキーの怒りに気づいたAは、眉を下げて笑った。
『なつにいとふゆねえは、そんなにこわくなかったよ。みんなよりやさしかったから。だけど……おおきいおとこのひとはにがてになっちゃったの』
「そうだったのか……」
『でもね、もうゴツゴツのおにいさんはこわくないよ。やさしいひとってわかったもん！』
そう言ってAは満面の笑みでフランキーにハグをした。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
