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頭を撫でたり声をかけたり、必死にAを落ち着かせようとしたおかげで、Aは少しずつ落ち着きを取り戻した。
深呼吸をするAの前に、ルフィが堂々と立って言い放つ。
「おれたちが、お前が帰る方法を一緒に探してやる！ だから、見つかるまではお前も仲間だ！」
『なかま……』
「ああ！ 絶対に“しょうと”に会わせてやる！」
『ほんとう……！？』
「本当だ！ ……んで、“しょうと”って誰だ？」
「「「知らなかったのかよ！！」」」
ズテーッ！ とみんなが崩れ落ちた。
Aは明らかに嬉しそうな顔で言った。
『しょうとは、わたしのおにいちゃんなの！ とってもやさしくて、とってもかっこいいんだよ！』
「兄ちゃんのこと大好きなんだな」
『うんっ！』
ほとんど目線の変わらないチョッパーの言葉に、Aは満面の笑みでそう返した。
二人のやり取りに、辺りは温かい空気に包まれた。
少しずつみんなに慣れてきたAは焦凍の話題を中心に会話を重ねたが、過去のトラウマについては一言も話さなかった。
また、みんなもそれについては触れようとしなかった。
爽やかな潮風が吹く船上。
みんなが船内にいる中、Aは芝生甲板に一人やってきた。
サンジが作ってくれたホットケーキ
チョッパーがくれたわたあめとチョコ
ルフィの冒険
ウソップの武勇伝
ブルックのジョーク
ゾロの剣
ロビンのハナハナの実の能力
ナミの天気を見るコツ
この数時間で出来た思い出を頭に浮かべながら、波打つ海をぼーっと眺めていた。
『……きれい』
日が水平線に沈み、海と空が真っ赤に染まる。
初めて見たその幻想的な景色に、Aは思わず手を伸ばした。
「おい、危ねェぞ！」
グイッと首根っこを引かれ、Aは驚いて尻もちをついた。
見上げると、さっきからほとんど関わっていないフランキーが少し焦った表情で立っていた。
『えっと、ありがとう……』
「また海に落ちそうになってたぞ！ でも、身を乗り出したくなるくらいってのはスーパー分かるけどな！」
歯を見せて笑うフランキーに、Aは少し安心したようだった。
Aはフランキーの隣で海を眺めながら、ポツリと呟いた。
『……ありがとう、ゴツゴツのおにいさん』
「……」
『わたしがおおきいひとにがてってきいたから、あんまりちかづかないようにしてくれてたでしょ？』
「……ンなこと知らねェな」
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
