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「緑谷ナイスー！！」
「怪我はない！？」
「緑谷も轟も、よく反応したな！」
ワッとみんなが集まってくる。
緑谷は、Aを抱えたまま屋上にいた。
「もう大丈夫だよ、Aちゃん。僕が来た！」
『……わ、わたし、たすかった……？』
優しく微笑んでAを降ろそうとしゃがんだ緑谷に、Aはギュッと抱きついた。
『こわかった……！』
「本当によく頑張ったね。もう安全だから、安心してね」
『うんっ……！』
今にも零れ落ちそうな涙を堪え、Aは緑谷から離れた。
下から聞こえてくる「だいじょーぶー！？」という声に緑谷は「大丈夫ー！」と返し、Aが落ち着くのを待ってからまた下に降りた。
安全な場所に全員が集まったのを確認して、相澤はバインダーを見ながら講評を始めた。
「まず初動が悪かった。ショッピングモールとはいえ、あの人数はいらない。あと、ダミーに釣られて全員が屋内に入ったのもおかしい。犯人が意図してそこに誘い込んでいて、一網打尽にされたらどうする。数人は外で――」
流れるように出てくるダメ出し。
みんなバツが悪そうな表情で、その時の様子を思い出していた。
Aと手を繋いでそれを聞いていた焦凍は、視線を落として唇を噛んだ。
――今回は運が良かった。緑谷が動いてくれたから、Aは助かった。
――だが、もしあそこに緑谷がいなかったら、Aは……
――不甲斐ない。こんなのじゃ、Aを守れない。
――目の前でまたAを失ったら、俺は……――
「轟」
相澤の声にハッとする。
目線を上げると、相澤は真っ直ぐ焦凍を見ていた。
「私情を一切挟むな、とは言わない。だが集中はしろ。実際の救助活動だった場合、その場に緑谷のスピードを持つヒーローがいるとは限らない。焦りで個性の使用を忘れたり反応が遅れたりするなんて、言語道断だ」
「……はい」
「何があっても自然に身体が動くように、身体に叩き込んでおけ」
「……はい」
ギュッと拳を握り、頷く。
暗い焦凍の雰囲気に、Aは手を引っ張った。
『しょうと、だいじょうぶ……？』
「……ああ、大丈夫だ」
それでも表情の晴れない焦凍に、Aは『そっか……』とつぶやいて前に向き直った。
相澤は少し息を吐いてから、「それとAちゃん」と言った。
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったため、Aは背筋をピンと伸ばして『はっ、はいっ！』と返事をした。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
