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外でそんなことがあったとは露知らず。
Aは身体をゆらゆらさせながら焦凍たちの救助を待っている。
窓からぴゅぅっと吹き込んだ風に髪が揺れるのを感じながら、Aは小さな声で独り言をもらした。
『えっと、みんながきてくれたら「てとあしをしばられてていたかったので、あるけません」っていう……はんにんさん、やさしくしてくれたからあんまりいたくないんだけどなぁ』
縄の隙間で少し動かせる手足を、小さくパタパタさせる。
オールマイトは、設定が設定とはいえ幼い少女に痛い思いはさせたくないと思ってだいぶ緩く縄を結んでいた。
そのとき、ものすごい轟音と振動が建物を包んだ。
一瞬身体が浮き上がったとも思えるくらいの振動に、Aは少し怖くなる。
窓の外を見たいけど、窓までは少し距離がある。
それに、動いてはだめだと相澤にもオールマイトにも言われていた。
何度か不定期に起こる轟音と振動。
さすがにAは怖くなってきて、ぎゅっと目を瞑った。
そのとき、微かに声がした。
「誰かいますか！」
「ヒーローです、助けに来ました！」
そんな声がドアの外から聞こえてきて、Aは言われた通りに大きな声で言った。
『たすけてー！ たすけてー！』
「ッ、近くにいる……この部屋だ！」
「瓦礫の倒壊の恐れは！？」
「ない！」
「開けるよ！」
バンッとドアが開かれ、耳郎、障子を筆頭に、戦闘に不向きなメンバーが入ってくる。
手足を縛られたAを見つけ駆け寄ろうとした、そのときだった。
さっきまでとは比べ物にならないほどの轟音と振動がして、建物がぐらりと傾いた。
「「Aちゃん！！」」
身動きの取れないA。
スローモーションのようにみんなの焦った顔が離れていき――
Aは、窓から放り出されていた。
『あ……』
Aは、だめだ、と本能的に思った。
これは助からない、と。
衝撃で、一番近くにいるみんなも体制を崩している。
手も動かせないから、どこかに捕まることもできない。
いや、本当はそんなにいろいろと考えてはいなかった。
ただ直感的に、諦めた。
せめてみんなを助けなきゃ、と思うより先に身体は勝手に個性を使い、窓を氷で塞いだ。
これまでで一番、厚くて硬い氷。
みんなが窓から放り出されないように。
その選択で、自分が助かる可能性が減ってしまっても。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
