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「Aちゃんはどうして一人でいたの？」
二人はぷらぷらと手を繋ぎながら、目的地も決めずに自由気ままに歩いていた。
Aは『んっとね、』と言葉を選ぶように間を開けてから、少し目線を落として答えた。
『きょうおうちにひとりでおるすばんだから、さみしくなっちゃっておそとにきたの』
「そうなんだ！ 僕はね、お母さんとはぐれちゃったんだ」
『まいごなの？ おかあさん、どんなひと？』
「みどりいろのかみの毛で、ちょっとまぁるいかんじだよ」
男の子の説明した特徴に、Aはうーんと唸りながら記憶を辿った。
Aは少しの間考え込んで、思い当たらなかったのかがっかりした声で答えた。
『うぅん…ごめんね、わたしわかんないや』
「だいじょうぶだよ、きっとどこかで会えるとおもうし」
『でも、きっと――くんのことしんぱいしてるよ。いっしょにさがそう？』
「……探してくれるの？」
『もちろん！ おともだちがこまってたらたすけてあげるんだよ！』
「ふふ、なんだかヒーローみたいだね！」
『……………ヒーロー？』
きょとん、とAは男の子の顔を見た。
男の子もきょとん、として首を傾げた。
「ヒーロー、知らない？」
『……ううん、しってるよ。……わたし、ヒーローみたい？』
「うん！ ヒーローはね、こまってる人を助けるんだよ！ すごくかっこいいの！ Aちゃんも、僕を助けようとしてくれてるでしょ？ だからヒーロー！」
『……わたし、ヒーロー………』
父の職業がヒーローだということは母から聞いていた。
つまり、父はヒーローで、ヒーローは父だと思っていたから、ヒーローはかっこいいなんて感情をこれまで抱くことがなかったのだ。
――ヒーローは“おとうさん”じゃなくて、こまってるひとをたすけるおしごと。
そっか、となんだかAは胸のつっかえが取れたような気がした。
『……うん、ヒーロー、かっこいいとおもう』
「だよね！ あのねあのね、僕はオールマイトが好きでね、なんばーわんヒーローなんだよ！」
『あ、そのおようふくのひとでしょ？』
「そうそう！ すっごくかっこいいでしょ？」
キラキラとした瞳で語る男の子の話に、いつの間にかAも聞き込んでいた。
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作者名：月木あや | 作成日時：2023年7月19日 12時
