102.でんわのないよう ページ9
ASide
「アイツがそんなことを……！？」
ふゆねえとなつにいとあったつぎのひ。
あさからしょうとはそうおおきなこえでいった。
おしごとまえのふゆねえからでんわがかかってきたみたいで、なんだかだいじなはなしをしてるみたい。
わたしは“じしょ”をよみながら、こっそりしょうとのはなしをきいていた。
「ああ、それで――知ってた？ ああ、あのときか……は、写真？ 捨てろって言っておいてくれ」
しゃしん？
わたしは“じしょ”で「しゃしん」をひいてみる。
『ありのままをうつしとること。また、そのうつしとったぞう。しゃじつ』
むずかしいことばばっかりで、よくわかんない。
でも、なんとなくイメージはできる。
パシャってするやつだよね。
そんなことをかんがえてるうちに、しょうとのでんわはおわったみたい。
「A、ちょっといいか」
しょうとはわたしをだっこしてすわった。
ちょっとむずかしいかおしてる。
『あんまりいいはなしじゃなかったの？』
「いや、そういうわけじゃねえ」
『じゃあどうしたの？』
わたしがくびをかしげると、しょうとはすこしかんがえてからいった。
「姉さんと夏兄が俺たちの話を聞いてて、Aのことがバレたってことは話したよな」
『うん』
「実は、そのときに親父も聞いてたみたいなんだ」
『……もうわたしのことしってたってこと？』
「ああ」
ちょっとびっくりしたけど、それならしられるのこわがるひつようなかったなっておもって、なんだかちょっとあんしんした。
しょうとは、わたしがあんまりびっくりしてないことにあんしんして、わたしのあたまをなでてくれた。
「それで、親父はAとちゃんと向き合いたいって……出来たら会いたいって言ってたらしい」
『……おとうさんと』
「ああ。だけど、Aが怖いって思うなら今後一切関わらないようにするし、養子のことも同意してくれるって」
『……そっかぁ』
おとうさんも、わたしにあいたいっていってくれたんだ……
まえのおとうさんをわすれることはないし、いまでもこわい。
でも、ふゆねえとなつにいとなかなおりできたみたいに、おとうさんともなかなおりできるかも……なんて。
わたしがじっとだまってかんがえてたからか、しょうとは「大丈夫か？」ってかおをのぞきこんできた。
わたしはうなずいて、しょうとをみあげた。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
