98.方針決定 ページ5
「我々も、Aちゃんが学校に通えてないことを心配していたんです。戸籍云々はこちら側ではサポートしきれないところもありますから」
「Aさん本人がいいのなら、我々は全力でサポートさせていただきます。ただ……焦凍くんが卒業した後はどうするおつもりですか？」
姉さんは迷わず答える。
「私は今は実家で父と一緒に暮らしていますが、そのときは実家を出るつもりです。Aと、それと焦凍も一緒に暮らそうと思っています」
「俺も……？」
てっきり、俺は一人暮らし――または実家暮らしになるものだと思っていた。
姉さんは俺に微笑み、頷いた。
「その頃にはAも成長して焦凍がいなくちゃだめではなくなってるかもしれないけど、でも一緒にいられたらそれ以上のことはないと思うから。……まあ、そこはそのときによってって感じかな」
キラキラの目で俺を見るAの頭を撫で、姉さんに心から感謝を伝えた。
校長先生も2回頷いて言った。
「では、体調が良ければ今年の4月から近くの小学校に入学する、ということですね」
「はい。それまでに手続きが済ませられれば、ですが……」
「……まずは、お父様にAさんの存在をお話していただくところですね」
俺も夏兄も姉さんも先生たちも、心配そうにAを見た。
しかし、Aは特に怖がったりせずに言った。
『いっかいおとうさんにあうんだよね』
「あ、いや、お父さんの許可をもらうだけだから、Aが直接会わなくても大丈夫だよ」
『そうなの？ じゃあ、わたしがゆうえいにいるよってことをはなすだけ？』
「……A、嫌じゃない？」
姉さんがそう聞くと、Aは少しの間『うーん』と考えた後、笑って首を振った。
『だいじょうぶだよ。だってこんかいがんばったら、しょうととずっといっしょにいられるんでしょ？』
「……そうだね。うん、そうだよね。ふふ、Aはほんとに焦凍が大好きだね」
『えへへ、そうだよ！』
姉さんが優しく撫でたAの頭を、俺もわしゃわしゃと撫でてやる。
Aはくすぐったそうにして笑った。
「父は今日帰ってくる予定なので、今日の夜にでも話をしてみます」
「わかりました。許可がいただけたかどうか、こちらにもお教えいただけたら有難いです」
「もちろんです！」
その後形式的な挨拶をする大人たちを見ながら、俺とAはそれぞれ喉を潤した。
――本当に、Aも強くなったな。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
