115.＿＿＿＿ ページ22
『……ええと』
またひとりになっちゃった。
おにいさんは「早く帰れ」っていってたけど、わたしはかえりかたをしらない。
わたしだって、かえれるならかえりたい。
＿＿＿＿に。
そのしゅんかん、わたしはあたまがまっしろになった。
『＿＿＿＿って……どこ……？』
あたまがぐるぐるする。
どこか、わたしがかえらなきゃいけないところがあったはず。
それはおうちじゃなくて、でもおうちみたいで……
とってもおおきくて……
それで……
『……そのばしょのなまえ、わかんない……』
どうして。
どうしてわからないの。
とってもだいじで、だいすきだったはずなのに。
わすれるはずがないのに。
だって、あそこには――
『――あそこには＿＿＿＿が――』
あたまにうかんでいたはずのかおが、ボヤボヤとしてきえていく。
『なんで……ねえ、どうして！？ わかんない、わかんないよ……！ わすれちゃだめ、わすれるわけない！ だって、だって、あそこは……ッ』
―――だめだ。
わからない。
ぜんぶぜんぶ、わからない。
わたしのあたまのなかを、ボヤボヤがいっぱいにしていく。
『もうやめて……わたし、かえらないと……そこにかえんなきゃだめなの……そうじゃないと、きっとしんぱいする……＿＿＿＿は、しんぱいしてくれる…………ああもうっ、＿＿＿＿ってだれなの！』
――ぷつん。
っておとがして、わたしはきゅうにねむけにおそわれた。
ていこうできないくらい、つよいつよいねむけ。
だけど、ここでねちゃったら、きっともうおもいだせない。
それがこわくて、わたしはひっしにめをあけていた。
でも、ねむけはあまりにもつよくて。
わたしのていこうはむなしく、しかいはまっくらにとじられた。
――いつから、Aとの時間は永遠だと錯覚していた。
そう、頭の中の俺が吐き捨てた。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
