114.いじわる？ ページ21
「お前、自分がどんな姿なのか見えてねぇだろ」
おにいさんのことばに、わたしはちょっとムッとした。
『わたしのしつもんにはぜんぜんこたえないのに、じぶんだけいいたいこというのだめだとおもう』
すると、おにいさんはきょとんとした。
わたしがおせっきょうみたいなことをしたのがよそうがいだった、みたいなそのはんのうに、わたしもくびをかしげる。
――このおにいさん、どこかであったことあるのかな。
そんなことをかんがえていたら、おにいさんはかたをふるわせてわらいはじめた。
『……なんでわらうの』
ますますムッとわたしに、おにいさんは「いいや」とくびをふった。
……まだわらってるけど。
「お前があまりにも変わってたから驚いたんだよ」
『かわってた……？』
まえのわたしをしってる、みたいなそのいいかたに、やっぱりとおもった。
わたしがわすれちゃってるだけで、たぶんこのおにいさんとはあったことがあるんだ。
おにいさんのわらいがおさまるのをまって、わたしは『ねえ』とくちをひらく。
『おにいさん、だあれ？』
おにいさんは「あー……」とちょっとかんがえながら、ブランコからこしをあげた。
わたしのまえまであるいてくると、しゃがんでわたしとめせんをあわせた。
「俺のことはまだわかんなくていい――というより、まだわかんないままの方がいい」
『……？ どういうこと……？』
もっとよくわかんなくなった。
なんだかこのおにいさん、わざとよくわかんないいいかたをしてるようなきがする。
まゆをひそめたわたしをみて、おにいさんはとつぜんたちあがった。
「お前はそろそろ行かねぇと後悔するぞ」
『？ こうかい？ いくって、どこに？』
そんなわたしをわらうように、おにいさんは「さあな」とだけはきすてた。
さすがにちょっといかりがわいてくる。
『さっきからおにいさんのいうことぜんぜんわかんないよ！ とにかく、おなまえおしえて！』
「そりゃあ企業秘密だな」
『なんで！』
おにいさんはまたクツクツとわらい、それからわたしのあたまをなでた。
ポカンとするわたしに、おにいさんはいった。
「また会ったときに教えてやる。だから今は帰れ」
『かえるって、どうやって？ わたしわかんな――』
わかんない、といおうとしたけど、ひとつまばたきすると、もうそこにおにいさんはいなかった。
なんだったんだろう。
いまの―――ツギハギのおにいさんは。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
