112.あるなつのきおく ページ19
原因もわからず、ただAの背を擦り続けて約1時間。
なんとか眠りについたAに、俺と瀬呂は息を吐き出した。
「Aちゃん眠れて良かったな……痛みで寝られずに一晩中痛がってたらどうしようかと思った」
「ああ……悪いな、遅い時間に呼び出しちまって」
「いいってことよ。ってか、そこまで遅い時間でもねぇよ。轟はAちゃんに合わせて俺らより早く寝てるからそう思うだけで、俺普段この1時間後でもまだ起きてるぞ」
そう言って笑った瀬呂。
助けてもらう度に思うが、本当に俺は仲間に恵まれている。
瀬呂は何度も礼を言う俺に「またなんかあったら呼べよ」と言い、隣の部屋に戻っていった。
Aの隣に自分の布団を敷き、電気を消して俺も横になった。
見ていた感じ体調悪そうなところはなかったが、実は親父と会ったのはAにとって少なからず負担になっていたのかもしれない。
というより、会うまでの緊張の方が負担になっていた可能性の方が高いだろう。
俺は寝息を立てるAの布団を肩までかけ直した。
「……頑張ったな、A」
悪かったとか、辛かったなとか、他にも言葉は浮かんだ。
でも、それだけ怖いなかアイツに再会したAの勇気を否定したくなかった。
さっきまで顔を歪めて痛みに耐えていたとは思えないくらいすやすやと眠るAに安心し、俺も目を閉じた。
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ASide
いえのなかは、なつのあつさでとってもくるしかった。
しょうとはおとうさんに“どうじょう”につれていかれて、おにわではふゆねえとなつにいがボールあそびをしてる。
とうやにいはおへやかな。
おかあさんはキッチンでおりょうり。
わたしは、エアコンのついてないじぶんのへやでえほんをよんでいた。
えほんをよみおわってひまになったわたしは、しょうとのくんれんをのぞきにいくことにした。
ふだんならそんなことかんがえないけど、きょうは“どうじょう”からのおとがおおきかったから。
そっとまどからのぞいたわたしは、いっしゅんでこうかいした。
おとうさんの、しょうとなんてみてないこわいめ。
しょうとの、おとうさんをこわがるまっくらなめ。
ふたりがすごくこわくみえていきをのんだわたしは、まどごしにおとうさんとめがあったきがした。
すぐにそこからにげだしたわたしをわらうみたいに、おにわのセミがおおきなこえでないていた。
――ああ、あつい。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
