109.一番の心配事 ページ16
No Side
膝に乗せたAを見つめながら、焦凍は小さな声で話し始めた。
「Aがいいなら、俺も賛成だ。けど……少し気になることがある」
「なんだ」
焦凍は一度息を吐き出した。
「この頃……というか年明け前にもあったんだが、Aが突然起きなくなることがあるんだ」
焦凍の言葉に、炎司は「はあ？」と言うように眉にシワを寄せた。
焦凍はAのお腹に手を回し、体温を確かめるように抱きしめた。
「これまでに2回あった。1回目のときはもともと熱を出してて、先生たちに預けていたときに起こった。すごく魘されていたが、身体を揺すっても起きなかった。数時間で目を覚ましたが、原因はわかってねぇ」
「2回目は」
「2回目は、いつも通り朝起こそうとしたら、まったく反応がなかった。そのときはお昼頃に目を覚ました」
「A、その時のことを覚えているか？」
Aは大きく頷き、その時のことを思い出す。
『どっちも、わたしがちっちゃいときのゆめをみてたよ』
「他には何も無いか？ その後体調悪くなったとかは？」
『ううん、なんにも』
「そうか」
多少ホッとした炎司だったが、表情の険しさは消えていない。
焦凍は瞳を不安げに揺らし、言う。
「例が少ねぇから判断はできねぇが……時間が長くなっているような気がする。俺はそれが一番怖え……次は2、3日起きねぇかもとか、いつか目を覚まさなくなるかもとか……そう考えちまう」
「その可能性は否定できないが、今はわからないことが多すぎるな」
『……ごめんね、こまらせちゃって』
小さなしょんぼりとした声でそうつぶやいたA。
二人は慌てて首を振った。
「Aは何も悪くねぇ。だから謝るな」
「焦凍の言うとおりだ。そのうち原因もわかるだろう」
難しい顔をしていた二人が眉を下げてそう言う光景に、Aは思わず笑みが溢れた。
『んふふ、しょうととおとうさん、そっくりだね』
「A、頼むからそれはやめてくれ」
ちょっと嬉しそうにする父と全力で嫌がる兄。
そんな二人に、Aはまた笑った。
ヒーローに休みという休みはほとんどない。
炎司は仕事に戻らなくてはならなかった。
そのため、日を改めて全員で集まることにした。
「冬美と夏雄の予定を確認してから、また焦凍の方に連絡をする。だから既読をつけろ」
「はあ……」
大きくため息をついた焦凍だった。
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作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
