95.本……？ ページ2
焦凍Side
先生たちと姉さんたちの予定が合うのは、思ったよりも早かった。
昨日姉さんと夏兄が帰ってから、Aはずっと『ふゆねえとなつにい、いつきてくれるかな』と言っている。
Aが二人に盗られたような気がして俺は少しだけ不満だったが、そんなことを言っていられるような軽い内容ではない話をしなくてはならないのだ。
相澤先生に「……お前顔に出過ぎだ」と言われながらも、次の週末に俺たち4姉弟と相澤先生、そして校長先生とで話し合いが行われることになった。
『みんなではなしあいって、なにするの？』
日程が決まった直後に内容は話さずに「話し合いをする」とだけ伝えたからか、Aはピンときていないようだった。
ほんの少し力の入った手を見て、俺は微笑んだ。
「緊張するようなことでもねぇ。これから先も俺とAが楽しく暮らせるようにするためにどうしたらいいか、っていうだけだ」
『なんだ、こわーいおはなしされるのかとおもった……』
「ッ……ふ、校長先生まで呼んで怖い話したら、それはもう学校行事か何かだな」
ホッと息を吐くAが的外れなことを言うため、俺は思わず吹き出した。
Aは「学校行事」という言葉に首を傾げながらも笑った。
Aは言葉を探すようにキョロキョロした後、『あっ』と顔を輝かせて言った。
『なんだか、いた
「至れり尽くせり、だな。難しい言葉知ってるんだな」
『えへへ……めがねのおにいさんがくれたこのほんね、とってもおもしろいの！ いっつもよんでるんだ』
本と言いながら目線をやったのは、飯田からのクリスマスプレゼントの国語辞典。
それは本なのか……？
ある意味本ではあるのだろうか……？
というより、国語辞典を読書に使ってるのか……？
いや、ページ数も多く単語も学べるから、普通の本より教育にいいのだろうか……？
ハッ、もしかして飯田はそれを見越して……！？
飯田はやっぱりすごいな、とつぶやきながらAの頭を撫でた。
そうしてやって来た1週間後。
今日は俺たちの部屋ではなく、校舎の会議室を借りることになっている。
Aと一緒に校門まで姉さんと夏兄を迎えに行くと、二人は大きな荷物を持っていた。
『ふゆねえ、なつにい！』
「A〜！ 久しぶり〜！」
「久しぶりってほど離れてないけどな……」
「一週間離れてたんだから久しぶりだよ！ ねー」
『ねー！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 521人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月木あや | 作成日時：2024年2月3日 17時
