3件のメッセージが届きました【夜久衛輔】

3：【朗報】逃げ道なし ページ5

＊＊＊



あの日のなつかしい夢を見て目覚める、春の足音がするような、ぽかぽかした天気のお昼過ぎ。

休日だからって、だらしないなんてのは言わないお約束だ。



テレビが付けっ放しになっている畳の部屋、茶色くて丸いテーブル(冬の名残で、まだこたつ布団がかけられている)

上には、私の昼ごはんが、ちょこんとラップして置いてある。

くうう、と、情けなくなるお腹の音に引かれ、もそもそと布団に入り、ラップをはずす。




「衛輔くん、帰ってきたらしいわよ」



私の茶碗の中にご飯を入れて持ってきた母に、間抜けな声で、へ？と返してしまう。


あれから、私にはなんの変化もないまま、4年の月日だけが経った。

近くにいる頃は3日のうちに1回は衛輔の名前を聞いていた我が家でも、遠く離れちゃってからはなかなか耳にしなくなったのに。


突然のだいすきな名前の登場に、耳がぴくりとする。


帰ってきたらしいわよ。

わかりやすい言葉が、確かめるように、胸の中でうずうずしている。



「へ？って。衛輔くんよ、まーさかあんた、忘れちゃったはずないわよね？」

「そんなわけ！」



ないじゃない、ですか。

勢い余って身を乗り出してしまったのが、なんだか恥ずかしくて、否定する声はだんだん小さくなる。

最後の、ですか、はほとんど空気だ。



「じゃあ、顔見せに行っといで。会いたがってるみたいよ」



と、衛輔のおばさんの名前が付け足される。

返事をする声は、なんとなく小さい。



ああ、まってまって

まってってば！


突然は胃が痛いって！



･･･雨降らないかな。

なんて、ぼんやりとテレビの天気予報に逃げる。



『今日1日、ポカポカ陽気の晴れです。洗濯物も乾きやすいでしょう』

4：意気地無し回避、失敗→←トーク

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す