【カリスマ】のんびり行こう 2 (ページ1)

今日:24 hit、昨日:28 hit、合計:2,884 hit

#51 それから[反発] ページ1

深い傷では無かったため数日で退院し、ハウスへと戻ってきたわたしが最初に向かったのは猿川さんの部屋だった。
あの夜以降、猿川さんはかなり荒れていたらしい。きっとやるせない気持ちをどうにかしたかったのだろう、と幼なじみの本橋さんは言っていた。外での喧嘩の頻度も増えているのだという。
それを聞いた時不謹慎にも嬉しいと感じてしまった自分がいた
猿川さんにとってわたしという存在はそれほどまでに心を動かす存在なのだと。仮だとしてもハウスの一員として認められているのだ
それが恋でなくても、嬉しい事だった。
だからこそ、わたしが身勝手に行動した結果起きたことを猿川さんがやるせなく思う気持ちを否定したかった。
猿川さんのせいじゃない、わたしが勝手に守ろうとしただけ

「猿川さん、いますか？」

返事は無い、が気配は感じる

「入りますね」

入るな、と返事が返ってこないことに安堵し扉を開ける。中は暗く、外の明かりが微かに漏れるばかり。それでも暗闇の中にベッドでうずくまる桃色を見つけ、わたしの心臓はどきりと音を立てた。
彼の部屋はいかんせん家具という家具が破壊されているので座る場所もなく、少し距離をとった場所まで歩み寄る。

「猿川さん、先日はご迷惑をおかけしました。」
「…別に、」
「それに、ありがとうございました」

わたしからのお礼にもぞりと動いた布団から「…は？」とあどけない顔がのぞいた。髪が珍しくセットされておらず幼さが増して可愛い。

「病院に行こうとしてくれたことも、止血のことも聞いてます。本当にありがとうございます」
「…礼言われる事なんて、俺してねぇだろ。結局…何も出来てねぇ」
「なんでそんなに落ち込んでるんですか。救おうとしてくれたからわたしは今こうして元気でいられるのに」

多数の武器を持つ男に囲まれたあの状況で女ひとりと言えど怪我人を背負って逃げることは大変だっただろう。住人といえど他人で、他の皆さんよりも過ごしている時間が短いわたしを救おうとしてくれた気持ちが嬉しかった。
元気な姿を見せて安心させたかったのに猿川さんはなぜか泣きそうな顔をしている。

「……お前、もう俺に関わんな」
「え？」
「関わんなって言ってんだよ」
「どうして？」
「また、喧嘩に巻き込む。あれは俺の問題だ、テメェには関係ねえんだよ」