私のヒーロー【成宮鳴】 (ページ30)

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知りたかったこと③御幸side ページ30

『お兄ちゃんはものすごくかっこいい人でした。』

逢阪は少し目線を下に向けて話し始めた。

俺は静かに逢阪の話に耳を傾けた。

『異父兄妹の私達は家族関係があまり良くありませんでした。
お兄ちゃんも私も、お母さんは一緒なのに、お母さんは全く私たちに興味がありませんでした。』

鳴の話してたことと当てはまるな…。

『そのうち私のお父さんとも関係が悪くなったお母さんは、私に当たるようになりました。
私に手を上げるお母さんから守ってくれたのはお兄ちゃんと鳴くんでした。』

「鳴ともその時から関わりがあったのか。」

『はい。鳴くんのお家は近所にありました。
だから通ってた小学校も一緒で、お兄ちゃんと鳴くんは仲が良かったんです。』

だからか……。鳴が久遠の妹を大事にするのも自ずとわかる。

『でも唯一、お兄ちゃんと一緒に心から楽しめるものがありました。……それが野球なんです。』

思い出しながら話す逢阪は悲しそうな表情になる。

『きっかけは鳴くんに誘われて見に行った野球の試合でした。』

「鳴のリトルの試合か？」

『そうです。すっかり影響を受けた私たち兄妹は、試合終わりの鳴くんを付き合わせてキャッチボールをしたりバットを貸してもらって振ってみたりしました。』

「逢阪もやってたのか？」

『やってましたよ！見よう見まねでやってみたんですけど、全然上手くできてなかったと思います。』

「そうか……。」

『それから、滅多にわがまま言わないお兄ちゃんは、野球がしたいとお母さんに頼み込んでなんとかチームの一員になったんです。』

「逢阪は入んなかったのか？」

『私は特別運動ができる訳ではなく、少し身体も弱かったので……それから女の子が混じるのは危ないからって入れて貰えませんでした。』

「それでも、野球は好きなままなんだな。」

『それはお兄ちゃんと鳴くんのお陰ですよ。
2人共、私のために友達集めて野球してくれたり、練習終わりにキャッチボールもしてくれたりしたんです。』

『なにより……』と彼女は一息ついてから続ける。

『私が野球をしていなくても、お兄ちゃんと鳴くんがプレーで魅せてくれたんです。』

久しぶりに目が合った彼女の表情はとても切なく、でも懐かしそうに笑っていた。