私のヒーロー【成宮鳴】 (ページ21)

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久遠の妹②御幸side ページ21

でも唯一、久遠と同じく感じたのは野球が好きだってこと。

帰り話した時、久遠の妹は野球のことを楽しそうに話していた。

本人曰く、身長や体格は極端に小さいわけではないが、体力もなく運動神経も良くないため男子の運動にはついていけないんだとか。

その代わり選手のサポートができるよういろんなことを勉強したくて試合や練習はよく見に行っていたらしい。
きっとそれは久遠と鳴の野球を見に行っていたんだろうなと何となく勘づいてた。

久遠は俺によく妹の話をしていた。

妹が可愛いとか、妹が可愛いとか、妹が可愛いとか……。
まるで惚気のようだった。

それ程までに久遠は妹のことを大事にしてたってことだな。

それに久遠はよく、妹の夢を叶えたいって言ってたな。
詳しくは知らないけど、そのことを話す久遠はどんな時よりも、燃えるような決意を固めた瞳で語っていたことだけは覚えている。

……そんな久遠が何で妹を置いて居なくなっちまったのか。

事故か、病気か、自殺か。

鳴と話したあの時、珍しく鳴の声が少し震えていた。
そんなあいつに、久遠の死因が何かって流石の俺でも聞けなかった。

今日久遠の妹を送って帰ったのも、何か久遠について分かることがあるかもしれないって思ったから。

……でも彼女の純粋で明るい笑顔、楽しそうに野球のことを話す姿を見て俺は何も言えなかった。

初めてグラウンドで会った時、なんでガン見してたのか聞かれた時も、本当のことが言えなかった。

ってか、俺そんなに顔に出てたのか……？自分でも珍しいと思ったが仕方ないとも感じた。

……まぁ、久遠から聞いてた通り、可愛いと思ったのは本心だけど。

今日感じたことを思い出しながら歩いていると、いつの間にか目の前に寮が見えていた。

「おい！御幸、どこ行ってたんだよ！」

「すみません、ランニングしてました。」

「それにしても全然汗かいてないのはなんでかな？嘘、吐かない方がいいよ？」

「ｱ…ﾊﾊﾊ……。」

純さんと亮さんが待ち構えているとは……。
亮さん、どうかその黒いオーラをしまってほしいんですが……。

明日は市大三高との試合。

久遠の妹にも、お前の兄ちゃんや鳴と同じくらいすげぇ奴が居るってこと、見せてやるからな。