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No.0 ページ1

「北さん」


私がそう呼ぶと、振り向く北信介さん。

私の、大好きな人。


部活終わりに暗くて危ないやろって家まで送ってくれるとこも、冗談が伝わらないけどたまにおかしなこと言うとこも、全部、ぜんぶ好きです。

どんな顔をしていえばいいか分からなかった。
少しだけ、緊張している。
その証拠に私は声が出しにくくなって、気持ちが焦る。


「月が、綺麗ですね」


臆病な私ができる、唯一のこと。
思いを伝えられない私ができる、唯一のこと。

このことばに、私の想いをのせた。



月光が彼を美しく照らしている。


北さんは、なんにも表情をかえなかった。

いつも通りだ。



「そうやなあ」



ぽつりと呟いた、彼。



ーーああ。

私の想いは、届かなかったみたいだ。




そのまま歩き出してしまう背中を見つめる。
どんなに見ていたって、彼は気づかず先に行ってしまう。









伝わらないならこんな言葉、意味なんかない。




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作者名:やふ | 作成日時:2018年12月11日 16時

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