【Fischer's】麗しい花のような愛を【短編集】

悲しい思い出【DAMA】 ページ5

ダーマside＿＿＿＿＿＿


　何が正しいかなんて俺はなんも分かってなくて。


　何が間違っていたかさえも俺は分からない。


　ただ一つだけ分かるのは、俺はちゃんとAを愛してやれなかったってこと。



　Aと別れてから、一ヶ月が経った。



「好きだ」

　なんてストレートに言ってみても、結局、お前には届いてなかったんだな。


　どうすりゃ伝えられたんだよ。俺はこういうことには疎くて、何をしたら愛を伝えれたかなんて、なんも分かんねぇよ。



「サヨナラ」

　そう言ったお前は何故か泣いてて、“ああ、俺のせいだな”って胸が激しく痛んだ。


　記念日には必ずデートするつもりだった。

　いきなり仕事とか入っても、次の日とかにはちゃんと出かけてた。


　花を贈った。

　花言葉を意識して、普段言えないような想いを花にのせて伝えた。



「ねぇダーマ。一緒にゲームしよっかー」
「手加減しねぇぞ？」

　なんて二人で夜通しゲームをやったのは、もう二ヶ月も前の話。

　俺の趣味に付き合ってくれて、ホントに有り難いと思った。



「アイシテル」

　その五文字を言うのは、そんなに難しいことだったかよ。照れたり変な意地張ったりしないで、素直に伝えてやれば良かったんだ。



　今更後悔してももう遅いってことは、痛いほど分かってるんだ。



　一人過ごす家の中には、お前の面影がたくさん残ってる。テレビの横にある棚にはお前がよくつけてた香水が置いてあって、ゲーム機にはお前がイタズラで貼ったシールが。


　目を閉じても、お前の姿は消えないんだ。



　寝ようと思って布団に入っても、考えるのはお前のこと。俺ってこんなにAのことが好きだったんだなぁって。



　でも、思い出すのは悲しい思い出だけ。


　楽しい思い出、どこ行っちまったんだよ。



　最近、不思議な夢をよく見る。


「ダーマ」

　って俺のことを呼んで、Aが俺に手を差し出すんだ。


　俺は掴もうとするけど、俺の手は空を切るだけ。お前は霧のように消えて、辺りに彼岸花がたくさん咲くんだ。



　彼岸花。



　悲しい思い出しか残らない俺には、お似合いの花だな。



　なあ、A。



　愛してるよ。





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彼岸花の花言葉 『悲しい思い出』

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