Y ページ14
手配してもらった部屋で、夜明けを待った。
とても眠れる状態ではなかった。
まだ、微かに震えている...
室長の計らいがありがたかった。
私には、行く宛などなかったから。
カイトさんに依存してきた事を痛感する。
カイトさん...
最後の電話...
必死に私を止めてくれた。
カイトさんの言葉を"愛の告白"かのように錯覚してしまう前に電話を切った。
片思いだというのに、サヨナラするのが身を切られるように辛い。
もし、カイトさんが私を必要としてくれてたら...私は、離れられそうにない
決心が鈍る前に、一刻も早く遠くまで行こう。
遠すぎて、会いたくなっても、会いに行けないくらい遠くへ...
朝陽が昇るのを待って室長室に電話をした。
室長秘書が応対してくれた。
昨晩の事を詫びた後、チェックアウトをしたいので、代金の清算をお願いしたが、
フロントを通していないので、代金は請求出来ないと断られた。
室長秘書が、今後の事について説明しに部屋まで来てくれた。
イタリアへの研修の説明は、
研修期間は１年。
手続きの都合上、最低でも一ヶ月は要する事。
住居や手続きはこちらで行う。
労働許可証がとれ次第、就労ビザを申請する。
ビザは、本人しか申請出来ないので、自分でとってもらう事になる。
現地のオリエンテーションとして、90日未満の滞在を指示。
90日未満なら、無査証で大丈夫。
イタリア渡航チケット、住居については、手配します。
との事だったけど...
...覚えられない...(泣)
「スミマセン。メモとるの忘れていて...」
「あ、ゴメンなさい！渡すの忘れてました(苦笑)」と、封筒を差し出した。
中には、イタリア渡航に際しての手続きの仕方や、必要な書類が入っていた。
もしかして...私のために、家にも帰らず仕事させてしまったのかもしれない。
申し訳なくなって
「私のせいで、無理させてしまって...スミマセンでした。」と言うと、
秘書の方が、
「同じ女性として、あなたがどんなに辛い想いをされてるのか考えたら...何ともないです。」
「一人で悩まないで下さい。」
「友人を紹介します。イタリアで困った事あれば、相談して下さいね」
私の両手を握って、励ましてくれた。
「ありがとうございます」
ありがたくて...ありがたくて...
しばらく頭をあげられなかった。
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作者名：yui | 作成日時：2017年11月20日 14時
