会いたい人は...３ (ページ17)

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「こんにちは。」

声をかけたがAは、振り向きもしない

「俺、カイトと言います。ケイさんの友人です。」
「Aさんですよね」

ケイさんの名前を聞くと、少し視線が動いたようだが、何も答えず、又、窓の外に視線は戻ってしまった

「あの...俺、マンションの権利書預かってるんですけど、Aさんに渡します！今持ってくるんで、１時間...いや、30分で戻ります！待ってて下さい」

俺は、急いで家に帰って、預かっていた権利書を手に戻った

「マジか...いねぇし...」

Aの姿はなかった。

「何だよ、あの人...」

権利書を渡す事も出来ず、渡したかった腕時計も俺の手に残った。

あれから、俺は毎日マンションに顔を出すようにした。

勿論、権利書と腕時計を持って...

Aは、毎日ではないが、ふらっとマンションにくるようになった。

その度、権利書をAの傍に置くのだが、そのまま帰ってしまうので、結局、又俺が持って帰っていた。

「こんにちは。」
「...」
相変わらず、俺の挨拶にも答えず、見ようともしないけど、俺が話しかけると、ほんの少しだけ耳を俺の方に向けるようになった。

今日は寒いだの、暑いだの、どうでもいい話を一方的に話す俺。

自分でも何やってんだと思うけど、いつ頃からか、マンションにAが居ないと寂しく感じるようになっていた。

そんなある日、
相変わらず何も話さないし、こちらを見もしないA、
いつもと変わらないんだけど...
Aの様子が違う気がした。

「何かあったのか？」

俺の問いかけにAが初めて俺の目を見た。

初めて目があった。

あの瞬間、俺は...お前に落ちたんだ。

そして、その目を見てわかった。

お前が死にたがっている事が。