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治療が終わり保健室を後にする。
「今日はどうする?帰る?」
「うん。帰りたい」
「わかった」
あんな事があって誰がここに残りたいか。
否定なんて出来るはずもない。
「私も一緒に帰る」
「え?」
驚くのは当然。
いつもは順平が先に帰り、あとから私が家に寄るから。
でも、今日はどうしても順平と一緒に居たい。
いや、何故か居なきゃいけない気がした。
「ダメだったらいいんだけど」
「だめじゃない、よ。母さんいるかもしれないけど」
一緒に居られるの嬉しい、なんて
目を伏せながら小声で言う姿がなんだか愛おしい。
今日は何しようかと考える。
二人きりならそういう事もする。
多分二人じゃなくてもするけど。
此処にいるという証が欲しいから。
家庭環境が似ているからか、縋るものも似ている。
互いが互いの存在を肯定している。
上から明るい光が手を繋ぎ歩く私達を照らす。
これが最後だなんてお天道様も思わなかっただろう。
次の日、学校に行けば順平の姿は無かった。
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作者名:八重樫 | 作成日時:2021年3月4日 1時