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「Aちゃん」
「？」
入れ替わりで来たのはしゅんくん。なにやら甘い匂いがする。これはもしや……
「はい、お兄さん特製のバニララテです！」
スティックのだけどね、と置かれたマグカップから一気にふわっと甘い匂いがする。嬉しくてしゅんくんの顔を見るとよかったと安心した笑みを浮かべる。
「ほーら笑顔になった。お兄さんはAちゃんのこといっぱい知ってるから、どうしたら元気になるかとかわかるんですよ。甘い物が好きだとか、特にバニララテが好きだとか、ね？ほら、冷めないうちに飲みなよ」
「うん、ありがと」
一口含むと広がる甘さが私の中の悪かった気分を浄化させてくれる。そして、室温とはまた違った温かさが強ばっていた身体をほぐしてくれる。
川上さんが言っていたのはこういうことか。
しゅんくんとは付き合いが長いんだから、Aのこともわかってくれてるよって事か。
「そう言えば…」
「ん？」
「Aちゃんって雨嫌いだったよね？もしかしてそれで機嫌悪い？」
小さく頷くと、しゅんくんは私の椅子を回転させ向かい合う状態になり前にしゃがむ。
そっか〜そうだったな、と言いながら頭に手を乗せる。
「嫌なら言いなよ？俺がそんなこと気にならないように元気にしてあげるからさ。わかった？」
撫でながら言ってくれるしゅんくんの声は優しくて、溢れそうになるものをぐっと堪えて頷く。
「ん、いい子。それ飲んであと1時間ぐらいしたら、一緒にご飯食べよ」
「うん、そうする」
よし、がんばれ！と言うしゅんくんはナイスガイそのもので、ほんの数分のやり取りだけで雨の嫌な感じも蒸し暑さの嫌な感じも無くなってしまった。
「ね、しゅんくん」
「なに？」
「ありがと」
「どういたしまして」
私の彼氏は本当にお兄ちゃんみたいで、色々わかってくれて、やさしくて、かっこよくて
数え切れないぐらいに良いところがあります。
こんな人、私には勿体ないぐらいと、日々、感じております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「須貝さん？」
「なんでしょう福良さん」
「オフィスであんまりイチャつかないでね？」
「わかってますって、今回はあのままだと多分夜遅くまで作業することになってたよ。体に悪いし、ちゃんと睡眠取ってもらわなきゃ困るでしょ」
「それはそうだけど、場所は弁えてね」
「わかってますって」
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作者名：やどかりさん | 作成日時：2020年11月8日 15時
