これは誰の恋６ ページ6
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A…？
行きつけのショップで服を見ていたら、Aがエスカレーターを上がっていくのが見えた。上の階には屋上のガーデンショップしかない。
制服…学校帰りか。そういえば今日委員会があったっけ。
「この服どうなさいますか？」
「あ、ああちょっとまた後で」
そそくさとショップを後にしてAを追いかける。ろくに話したこともない女子を追いかけるなんて
。気になるんだからしょうがない。
屋上に上がると日が落ちかけ、ライトアップされた洋風のガーデンショップが目の前に広がる。Aは店頭の紫陽花の前で選んでいるようだった。
俺、なんできたんだろ…
海が惚れてるから気になった？自分はそんなミーハー心があったのかと少し自分にあきれながらもゆっくりと近づいた。季節の花である紫陽花は鮮やかに並べられている。
Aがひとりで息が漏れるように小さく笑った。「嬉しかったな…」と呟いている。
Aが笑ってる…
ひとりで笑っているとか呟いているとか関係なしに、その笑顔に見とれてしまった。無表情が崩れ、そこから生まれた表情は、感じたことのない驚きがあった。
誰かが言っていた。美しさとは、驚きである、とか。不躾な視線にも、Aは気づいてない様子である。
なにかあったのだろう。学校で何がいいこと？普段ほとんど話すことのない彼女が。海となんかあったのか？ふーん。意外と手を打つのがはやいな。
途端に面白くない気持ちになって、声をかけた。
「何が嬉しかったの？」
「う、うわああああああ！」
「わああああ！」
隣で叫ばれたものだから、びっくりして声が出た。な、なんだよ。こんな声でるのか。
「あのさ…俺、お化けじゃないんだから」
「あ……ごめんなさい」
(ごめんなさい)という声が、懐かしい声でリフレインした。これはどこで聞いた声だろう。前にもこんなことがあった気がする。
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作者名：真木 | 作成日時：2018年6月18日 11時
