これは誰の恋3 ページ3
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これは私の恋
遠くから眺めているだけの恋。それだけでも幸せだと思った。
高校に入って拓弥くんを見かけたとき、すぐにあのお祭りの日の拓弥くんだと気づいた。また会えるとは思っていなかったからその姿を入学式に見たときは腰が抜けるほど驚いた。
ふつうならこれは運命じゃないかなんて思うけれど、拓弥くんは入学してすぐにこの学校の王子様となったようで、彼が近くを通るだけで女子たちは色めきたった。
確かに裏山で遊んだあの日から、拓弥くんはとてつもなくかっこいい男子に成長していた。あの日初めて好きになった初恋の男の子は、女子みんながときめく王子様だ。
そして所詮私もその女子の中の一人にすぎなかった。入学初日は勇気を総動員して話しかけたが、人一倍の人見知りさと話し下手がいたたまれずに涙目で逃げ去った。
ただの不審な女子に思われただろうな、と思うと少しかなしい。
拓弥くんは常に周りに女の子がいる。そんなことにも慣れているんだろうし、覚えてないと思うけど。
「Aさん!」
ぼーっと廊下を歩いていたら、後ろから声をかけられた。この声と周りのざわめきからして、もう一人の「王子様」に違いない。
「小笠原くん……何?」
人見知りをこじらせて、私は周囲から冷たい人に思われているのは知っていた。直そうと思っても緊張すると余計に無愛想にうつってしまう。ごめん、小笠原くん。
「今日って委員会何時からだっけ?時間忘れちゃってさ」
そんな私にも構わず、おもわずこちらも頬がゆるむような笑顔で聞いてきた。ニコニコしている顔はなんだか子犬みたいでとても癒される。
「16時からじゃないかな」
「あー!そうだったそうだった!ありがとうAちゃん、助かった」
どことなくオーバーリアクションな小笠原君に気を取られて名前を呼ばれたことを流しそうになった。
「今…名前…」
「じゃあ今日よろしくね」
そういうとパチン、と音が鳴りそうなウインクをして、風のように教室へ戻っていった。周りの女子から黄色い声があがる。
委員会の時間なんてクラスの女子に聞けばすぐわかるんじゃないかな、と思ったが小笠原くんの笑顔をみるとこうして話しかけてくれるのは嬉しい。
誰にでも優しい彼が女子に人気があるのも納得だ、と周囲からの視線を感じて思った。
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作者名:真木 | 作成日時:2018年6月18日 11時