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矢花サイド

何も持たずに手ぶらで、スニーカーを履いて家を出るとあの場所に向かって歩きだした。

あの場所というのは、工事で道が通れずに仕方なく遠回りの道を使って通った、あの森。

大きな道路があって、そこには分岐点があって…。

矢花「(少し時間があるからって、ちょっとだけのつもりで行ったっけ)」

右に曲がって道路を歩いていき、いつの間にか道路から外れて草むらを掻き分けて…。

矢花「…そうだ。俺はここで、踊っていた龍と出会ったんだ…」

手足が長くて、しなやかで優雅に踊っている龍…。

でも、彼は白鳥町に帰ってしまったんだ。多分、施設にも…。

そういえば、児童養護施設に行った事ないけど、

確か、この道を真っ直ぐに行けばあるんだっけ。

矢花「行ってみようか」

井ノ原さんは龍が実家で暮らすと聞いた後、児童養護施設に復職したと聞いたんだ。

今、いるかな…。

矢花「ここが龍が暮らしていた、児童養護施設ね…」

2階建てでエメラルドグリーンの建物。割りと大きいな。

職員「どちら様ですか?」

矢花「あっ…」

施設から一人の職員が出てきた。

職員「もしかして、施設の子供の関係者とか?」

矢花「いいえ。あの、井ノ原さんはいらっしゃいますか?」

職員「えぇ、いますけど。井ノ原先生とのご関係は?」

えっ、ますます俺の事を怪しんでる…(ーー;)。

どうしよ、何て返せばいいんだ…。

井ノ原「どうしました?」

職員「井ノ原先生。お知り合いの方が…」

矢花「井ノ原さん!」

井ノ原「矢花くんじゃん!久しぶり(^-^)!(職員に)2人だけで話さしてもらってもいいですか?」

職員は「分かりました」と頭を下げて、施設に入っていった。

矢花「井ノ原さん、お久しぶりですm(_ _)m。お元気でしたか?」

井ノ原「うん、矢花くんも元気そうだね(^-^)。ご家族はお元気?」

矢花「はい。あの、龍の事なんですけど…」

井ノ原「どうした?(・・?)」

矢花「実は昨年の冬頃に喧嘩しちゃって。というか、彼に大嫌いって言われてから連絡を取らなくなったんです。だけど、仲直りしたくてこの前、家の方に電話したんですが、龍が家を出たって…」

実は音楽会の前日の夜、龍に仲直りしようと松尾家に電話したんだ。

ところが、お兄さんによると龍が家を出てしまったというショッキングな出来事を聞いてしまった。

矢花「井ノ原さん?」

井ノ原「君には黙っていてほしいと、龍に言われたんだけど…」

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作者名:セーラーローズ | 作成日時:2023年10月17日 22時

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