【d!企画】汝は人狼なりや？【前編】 (ページ15)

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微睡みの中、意識がぼんやりと覚める。
いつの間にか、寝てしまっていたようだ。
まとわりつく眠気の中、そこに居るはずの彼に声をかける。

『ん、ぅ…ろぼ、ろ？』
｢…っA！？｣

ロボロの焦った様な声に異変を覚え、急速に意識が戻される。慌てて目を開くと、そこは確かにリビングで、でも、血だらけで、ぇ、ぁ、？

『っひ…ぃ、きゃ、』
｢落ち着いて、A、落ち着け｣
『ゃ、ろぼろ、なに、なんで？血、血が、』
｢A、聞いて、ええな？…とりあえず、場所変えよか｣

ロボロに袖で目を覆われて、袖を掴むように言われ手を引かれる。息吸わんようにな、と声をかけられ言う通りにして、ひとまず私の部屋へ動いた。

｢…A、よく聞いてな、あれ、Aが寝とる間に、部屋に、入ってきてん｣
『…嘘、だって、鍵して、チェーンだって』
｢壊された。
A、よく聞いて。あれは、人間やない｣
『…人間、じゃ、ない？』

人間じゃない。だって、一瞬視認してしまった赤い塊は、確かに人の形をしていた。

｢人間の形をしていて、確かに喋った。せやけど、…犬みたいな耳が、狐みたいな尻尾が生えとった｣
『…なに、それ』
｢…言うなら、狼や。狼の耳と尻尾が生えとった。｣
『なに、ロボロ、なんでふざけるの？』
｢ふざけとらん！｣

いきなり出された大声にびくりと肩が跳ねる。ただ、あれだけ穏やかなロボロがそこまで声を上げるということは、やはり、事実としか思えない。

｢っごめん、A｣
『こっちこそごめん、…信じられない、けど、本当なんだね』
｢…信じてくれて、ありがとう｣
『ううん…それで、』
｢…ほんま、焦ってん、それで、慌てて包丁持って、それで｣
『…ロボロ、が？』
｢…うん。…Aを守らなきゃって、それだけしか思えなくて、気付いたら、｣
『…そう、そっか。…そ、か。』

未だ、信じれない。人間じゃないナニカが家に入ってきた事も、自分が殺されかけた事も、ロボロが守ってくれた事も、ロボロがナニカを殺した事も。
けど、ロボロの震える瞳が、赤い手が、真実だと物語っていた。

ふわりと、彼の首に手を回し、体を彼の華奢な体躯に預ける。簡単に出来たから、ロボロの背が低くてよかった。
彼は焦って、けれど私を受け止める。手の汚れを気にしてか、私の背中に手を回すことはしてくれなかった。

『…ロ、ボロ、ありがとう、ロボロが居なかったら、私、…』
｢…A…｣

ロボロもやっと、私の背中に手を添えた。