【d!企画】汝は人狼なりや？【前編】 (ページ1)

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【gr】黒い烏も白と為るページ1

※死ネタ注意

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あらゆるコミュニティには必ずトップが存在し、私達における其れは彼であった。

崇高かつ庶民的な彼は市民から親しまれている。
体裁を取り繕いながらも周囲に巧く溶け込む彼王の姿は綺麗で、誰もが見蕩れると同時に畏怖の念を抱いていた。

私はずっと、彼は人間ではないと思っていた。そんな脆弱な存在とは程遠い、カミサマにも近い何かなのだと信じて疑わなかった。

一度だけ、彼と言葉を交わしたことがある。今思えば夢物語のような話だ。滑らかな金色の糸のような髪を揺らし、口元はいつも笑みを絶やさなかった。

ぽつりぽつりと、当たり障りのない未来の話をした。我らはどう導かれ、どのように彼は君臨するのか。内容は一言一句漏らさず記憶しているが、明記する必要もないのでそれは割愛する。
彼は前だけを見据え、私達を導いてくれるのだと再認識させられたことは想像に難くないだろう。

黙って話に聞き入っていた私に、「本当は王なんて柄じゃないんだ」と呟いた。謙虚な方だと思った。
この方に一生付き従い続けたい。祈祷を捧げ、崇め、さすらば我らを導く王たる器。
人々は耽溺した。永遠にも続く統治を冀った。

けれど彼は、発狂した人間に刺され呆気なく死んだ。
思想が非凡でも、民衆に仰望されようとも、散り際は人間のそれと同じだった。

稲妻のような衝撃に襲われた。
あぁ、わたしはなんて愚かだったのだろう。
彼は最初から、どうしようもなく人間だった。

けれど、それももう終わった話ではないか？

確かに彼は紛れもなくヒトであった。しかし今はどうだ。天国より蜘蛛の糸を垂らし、往生にて我らを手招いているのでは？

私達は彼の御方がいかに特異的であるか知っているはずだ。あのように尊大な彼が喪われたということすら、さらに世界から特出するためのステージだったに違いない！

もう彼は人間ではない。名実共に、其れを超越してしまった。
ならば、

「(きっと終わりは訪れない)」

向こうでも、私達を導いてくださるだろう！