prince-Yuta.K- ページ9
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優太「……」
歩きながら、Aが家に入ったのを確認した。
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優太「…くっそ……」
唇を噛むと、ほんのり血の味が口に広がる。
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一目惚れだった。
優太「……っ、」
教室に入ってきた彼女に、誰もが釘付けで。
こんなにも、魅力に溢れた高校一年生なんているのだろうかと、疑うくらい。
高校生活初日に、すでに学校に行く意味を見出した気がしていた。
彼女と仲良くなれたあの日は、本当に偶然だった。
優太「……」
この偶然を、なんとかものにしたいと思って、
優太「俺、岸優太!よろしく!」
そうは言ったものの、緊張で間が持たず、ダッシュで帰ったのも、今じゃ思い出話。
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もう暗くなった、湿った空を見上げながら思う。
なんで見上げたのか。きっと、
優太「……、」
この流れそうな涙を、止めたかったから。
本当に、大好きだった__________
優太「なんでだよっ……」
Aに1番近かったのは、俺だったのに。
たとえAが、俺に気持ちがなくても、それでもよかった。
そばにいれるだけで、幸せだった。
釣り合わない
俺が、陰でそう言われていたことなんて、きっと彼女は知らないんだろう。
…なのに、
なんであんな、ポッと出の気取ったイケメンに、取られなきゃいけないんだ。
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優太「……はは、」
優太「かなわねぇなあ…」
乾いた笑いが、自分の脳内に響く。
__________俺らは、絶対離れられへんから。腐れ縁だわ。ありえへんほど、幸せな縁やなぁ。
いつの日か、俺にそう言った、生意気な顔面国宝の顔が浮かぶ。
夏が訪れそうな香りを、風が運んだ。
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作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年6月23日 23時