destiny ページ32
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『……』
『冗談、きついなぁ…』
無理矢理、笑う。
きっと、笑えてなんかない。
信じたくなくて、聞きたくなくて、こんな話終わりにしたいから、
笑えば、どうにかなると思った。
「そりゃ、冗談やないからな」
廉も、笑っていたけど、笑えてなかった。
そんな廉を見て、堪えていたものが、目から溢れてどうしようもない。
「…Aの泣く顔は、いっちばん見たない」
廉は、頰に流れる涙を、優しく拭ってくれた。
視界がぼやけていても、
廉がそばにいることを感じる。
「見たくないのに、その原因が俺ってのが、」
「死ぬほど辛いわ」
自分で言っておいて、…ほんとに自分勝手な男。
「…Aは、別れてもええか?」
『……』
『何言ってんの…』
あまりにも意地悪すぎる、そんな質問。
「…答えてや」
『別れたくないに決まってんじゃん!』
わかってて、聞くのやめてよ。
そんな私の気持ちも知らず、廉はホッとしたような顔だった。
「…よかった」
何を言ってるの?
別れたいんじゃ、ないの___________?
『…前に、言ってたじゃん』
『ずっと好きってさ、……言ってたじゃん!』
『ねえあれは嘘なの?あの頃から、ずっとって……!』
強引に廉の腕を掴む。
制服の、擦れる音がした。
いつもの、穏やかな、冷静な自分は、どこにいっちゃったんだろう。
…ごめんね、廉。
「………」
そんな顔させて、
困らせて、ごめんね。
泣かれても困る。わかってるのに、
『ねえ!』
廉の腕をブンブン振って、泣きじゃくってしまう。
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作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年6月23日 23時