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destiny ページ31
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『……』
中に入ると、廉の香りでいっぱいだった。
安心する、私の大好きな香り。
『なんか、……』
廉の部屋、前も殺風景だったけど、
今はもっと空虚に感じる。
何もない。
備え付けられたもの以外、何も。
「…びっくりしとる?」
廉は、中に入っても、私の手を離さなかった。
『…うん』
『こんなに何もなかったっけ?』
背の高い廉を見上げた。
「…もうちょっと、あったかもな」
『…⁇』
聞こえるか聞こえないかの声で、そう言ったんだ。
そしたらね、
「…抱きしめていい?」
『…いいよ』
いつもは、勝手にやることも、聞いてきて。
そんな言い方されたら、…断れないよ。
この世の終わりみたいな、今にも泣き出しそうな、愛おしい表情で。
廉は、優しく私に触れた。
顔を埋めて、
長く、長く。
力を込めて、抱きしめたんだ。
私も、廉の背中に腕を回した。
「好き」
籠もった声。
『…ありがとう』
私も好きだよ、なんて言えたら良かったのかな。
やっぱり、私は廉の笑顔が1番の糧だ。
.
.
廉は、後ろ髪を引かれるように、ゆっくりと私から離れて、真正面に向き合う。
「…A」
「別れよっか」
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夕焼けは、これでもかと私たちを照らしていた。
それでも心は、大雨なのに。
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作者名：ティパ二
| 作成日時：2019年6月23日 23時
