destiny ページ27
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『え……えっ、まって』
体が、ボンドで接着されたかのように、椅子から立つことができなくて。
ただ、夕日に照らされた、
優太「っ……」
ひどく焦った優太の顔を、見るしかなかった。
息が上がっていて、全力で駆けてきたことがわかる。
制服のボタンは、ところどころなくて。
でも、第2ボタンだけは、光るように残っていた。
『…どう、して、優太がいるの……?』
優太「……」
何も答えない、私から目をそらす優太に、イライラしてしまう。
『え、ねえ、廉は?私、廉に待っててって言われて、』
『1時間も、ずっとここに__________』
私が、動揺してることを、優太も感じ取ったみたいだった。
ゆっくりと私の前まで歩いてきて、
まるで軟体動物のように、へなっとした、私の脇に手を入れて、ゆっくりと立たせた。
『………』
優太「…これ、届けにきたんだ」
『…?』
優太の大きな手には、１枚の白い封筒。
『…ね、…え、ねえ、これって、なんなのっ…?』
うまく、言いたいことが言葉にできない。
優太「…ごめん、俺もわかんねーんだわ」
優太「これだけ渡されて、1時間後にAに渡して欲しいって…」
『え…?』
身がぞっとした。
__________廉と、もう会えない気がした。
私が封筒を取らないから、優太が私の胸に押し付けて、その上から私の手をのせた。
優太「…あいつに、初めて頭下げられた」
優太「俺に頭下げるほど、大切なものなんじゃね?」
優太は遠回しに、受け取って欲しいと私に言った。
『……』
震える手で、そっと封筒を開けると、殺風景な白い便箋。
紙の擦れる音が、一層気持ちを高まらせる。
うっすらと見える文字が、
汚くて、どうしようもなかった。
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作者名：ティパ二
| 作成日時：2019年6月23日 23時
