king ページ21
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『かばん、』
廉は、学校の門を出るまで、ずっと私のかばんを持ってくれていた。
私が指さすと、
「…あ、」
自分もそれに目を向けて、
「持つからええよ。筋トレになる」
『大丈夫、私手ぶらだよ』
なんだかよくわからない理屈が、廉らしいなと思うけど、その隣で手ぶらは、ちょっと図々しいよね。
廉はなんだか微妙な顔をしているけど、
…まあいいやと、かばんに手を伸ばした。
でも、
『わ、!』
「…へへ、」
廉は得意げに笑いながら、素早くかばんを持ち上げた。
おかげで前によろめく私。
『……』
なんでよ、と思いながら顔を上げると、
「その両手で、弟くん守ったれ」
『えっ』
そう言うと、また私の数歩先を歩いた。
そういえば、たまに咄嗟に動くひろに、手が届かないことがあったかも。
『…ありがとう』
「気にすんな」
そう言って私を見ない廉は、少し照れてるのかな。
でも、結局歩幅を合わせてくれるから、
「……」
誇らしげにしている横顔が、はっきりと見えた。
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ひろ「あー!おにーちゃん!」
ひろは廉を見つけた途端、指をさして、勢いよく走り出した。
「おう!なんや、前より大きなったか?」
抱きついてきたひろに、廉も嬉しそうで。
かがんで、ひろの目線に合わせながら話していた。
ひろ、そんなに廉のことが好きなんだ__________
たった1回しか会ってないし、そんなに関わっていたわけじゃないからこそ、私はびっくりしていた。
ひろ「おねーちゃんのこと好きなんでしょー!」
「えっ…?」
『もー…』
廉が一瞬、固まった。
子どもって正直で、興味のあること知らないこと、なんでも聞いてくる。
すごく良いことだけど、
「ちょい、ここはそういう質問してええ場所やないからっ」
ちょーっと、困っちゃう時もあるんだ。
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作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年6月23日 23時