king ページ14
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『……あ、』
『…山田くんっ』
翌日、廊下で山田くんを見つけた。
“…おっ、Aちゃん”
私の声に振り向き、おはようと微笑んでくれた。
私は、タタタと小走りで駆け寄り、
『これ、ありがとう』
昨日のハンカチを渡した。
大雨だったから、髪も濡れちゃって、ハンカチの出番がたくさん。
とても助かった。
“ああ、うん。ごめんね、小さくて使えなかったでしょ”
山田くんは、やっぱり申し訳なさそうに、水色のハンカチを受け取った。
『ううん、すごく助かったよ』
“そう?ならよかった”
そう言って、制服のポケットに、それを突っ込む。
“…じゃあ”
手をヒラヒラと振り、山田くんは自分の教室に入っていった。
『……』
黙ってその後姿を見つめる。
『……』
__________伝えちゃえ
昨日の、山田くんの言葉を思い出した、
その時だった。
.
.
おは
『……、』
後ろから、最近聞き慣れていなかった声が、聞こえた。
惹きつけられるように、振り向く。
それは、長い足でゆっくりと歩き、私の前で立ち止まった。
「……」
「おは」
『えっ……』
久しぶりな、この感じ。
でも今日は、見下ろされているのに、その目に覇気はない。
『お、おはっ』
「山田と仲良いんか?」
間髪入れず、廉はそう言った。
真顔が、こんなにも美しい人はいるのだろうか。
『えっうーん…ちょっとハンカチを借りることがあって、返しただけ』
「ほーん、」
.
「なんや、ムカつくな」
『は……?』
眉間にしわを寄せた廉は、まるで、なんの違和感もなかった。
ずっと、いつもそばにいるような、普段の廉がそこにいる。
…思わず手を伸ばしそうになる。
触れたい、そう思った__________
.
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「…ギブアップ」
「ごめんもう無理」
『え…?』
「Aのいない毎日は、死ぬほどつまらんな」
廉に引かれた左手が
すっごく熱い__________
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作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年6月23日 23時