prince ページ2
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とうとう梅雨入りをした夜。
スウェットはもう暑くて、リネン生地のパジャマに変えた、今日。
『んー……』
私は、ベッドで手帳とにらめっこしていた。
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優太と話そう、なんて意気込んだのもつかの間。
放課後、私に空いてる日はなかった。
明日も、明後日も、土日を超えて月曜日も。
保育園に行くと言う意味の、“ほ”が書かれていた。
季節の変わり目で、病院は大忙しらしく、母は仕事に追われることになるから、
必然的に、私がお迎えに行く頻度が増える。
『もぅ……っ』
ボフっと、枕に顔を埋めた。
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私は、やっぱり普通じゃないのかもしれない。
また、そう思ってしまった。
ネガティブなことは考えないように、ってれいなと話した時に決めたのに。
『……』
そう簡単には、直らないんだね。
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その時だった。
そばに置いたスマホが、可愛らしい音をたて、画面を照らしたのは。
うるさいなぁ、と思いながらもスマホを手に取り、通知を確認する。
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『……えっ、』
不意に漏れた声。
まるで誰かが、仕組んだようにそれは来た。
…こんな私にもたまには、ラッキーが起こる。
“土曜日、空いてる?これ行かね?”
優太からの、優太らしいメッセージと、チーズのお店のURLだった。
『土曜日……』
そっか、休日なんて、すっかり頭になかった。
いつもはボケーっとしている優太に、なんだか一本取られた気がしたのは、秘密。
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作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年6月23日 23時