destiny ページ38
.
「……」
「…悔しいな、なんか」
『え…?』
そっと、私の頬から手をどかす。
廉の手が触れていたところは、一瞬にして温かみを失った。
「…こんなにそばにおるのに、すぐ手が届くのに、」
「全然、掴めへんわ」
そう言って、廉は自分自身を鼻で笑った。
『……廉、私のこと忘れられそう?』
「うーん…せやなぁ、」
「…無理、かな」
『……そっか、』
どちらか片方が忘れれば、
もう片方は、忘れなければならないという義務が発生する。
「…A、俺はお前を想っとるよ、ずっと」
でも、私たちの間にそんなことは起きなかった。
「Aが、俺とならなんとかなる、俺がおったら大丈夫。そう思える日まで、今度は俺が待つ」
思わず目を見開いた。
『…っ、なんで、……』
『ムカつかないの…?どうして、そんな優しくいられるの……?』
私が、廉は必要ないだとか、私を忘れられそうかとか、散々最低なこと聞いたのに、
どうしてまだ、そんなことが言えるの＿＿＿＿?
「だって、」
「俺にはAが必要やから」
「俺のこと、必要になったら、帰ってきてや」
「てか、俺だけやろ。お前の隣におれる奴」
廉は、切なそうに笑った。
いつか、れいなに言われたことを思い出してしまった。
『……そんな日、来るかわからないよ』
「来るよ。俺にはわかるから」
「きっと、すぐに」
そう言うと、廉は私の目を手で隠し、
『………』
おでこに、優しく柔らかい唇を当てた。
「…好きだよ、A」
そしてそう言い残し、来た時と同じように、ポッケに手を入れて歩き出した。
決して、振り返らない。
『……』
遠ざかる背中が、ぼやける。
私から突き放したのに、
自分で選んだ結論なのに、
どうして、行かないでって思うんだろう＿＿＿＿＿
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 749人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ティパ二(プロフ) - 有姫さん» ありがとうございます！3回も！作者はとても幸せです泣頑張ります！ (2019年6月17日 0時) (
レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
有姫(プロフ) - 最初っからもう3回も読んじゃいました！めっちゃ好きです！なんか涙出てきます！これからも更新楽しみにしてます！ (2019年6月16日 15時) (レス) id: 2062434e73 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - コキンちゃんさん» えー！めちゃ嬉しいです！これからもご愛読ください！ (2019年6月9日 0時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
コキンちゃん - めちゃめちゃ好きです！ (2019年6月8日 22時) (レス) id: 53d29c3657 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - あんぱんまんさん» ありがとうございます！なるべく良いペースで更新できるよう頑張りますっ！ (2019年6月3日 19時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ティパ二
| 作成日時：2019年5月29日 16時
