destiny ページ33
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『……』
しばらくは、抱きしめられていることに気がつかなかった。
「…なんで泣いとんの」
ようやく気づいたのは、耳元でそんな声がしたから。
廉の顔が見えなくて、良かった。
『…聞くなっ』
なんて、可愛くない。
「大事やろ、そこ」
「知らん奴に追っかけられて、怖かったから?俺が来て、安心したから?」
『…どっちも、』
ほんとはわからない。廉なんて全然関係ないかもしれない。ただただ怖かったからかもしれない。
でも廉は、抱きしめる力を少し強くした。
「…じゃあ、俺の役目やないってなんなん?恩知らずも甚だしい」
きっと、そう言いながらも廉の顔は笑ってる気がする。
「何言っても怒らへんから、ただ聞くだけ」
優しい、とっても優しい声だった。
『……廉は、』
『…廉は、いつも私を悲しませる。辛い気持ちにさせる。助けてくれたことなんて、一度もない』
『だから、廉の役目は私を悲しませることで、私を安心させてくれるのは、廉じゃな「黙って」
「…少し黙ってくれへん」
『聞くだけって言ったの誰』
廉は、抱きしめるのをやめた。
そのせいで、廉と向き合わないといけない。
暗くても、少しの街灯でしっかり目に焼き付く、綺麗な顔。
「……」
真っ直ぐ私を見つめる瞳は、怒ってなんかなかった。
「…俺な、Aのこと忘れたい」
それは私だって、同じだよ。
なのに、その言葉がとてつもない虚無感を与える。
『ならっ…、助けなければいいじゃん。プリントだって、取りに来なきゃいいのに』
「おん。だから、願望な。“忘れたい”っていう願望」
「多分、無理」
「俺の毎日にAがおらん、そんなん無理」
「…中1、あの頃と、俺の気持ちは変わらへん。どうしたって、Aが好き」
私と廉の世界が、そこにあった。
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ティパ二(プロフ) - 有姫さん» ありがとうございます！3回も！作者はとても幸せです泣頑張ります！ (2019年6月17日 0時) (
レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
有姫(プロフ) - 最初っからもう3回も読んじゃいました！めっちゃ好きです！なんか涙出てきます！これからも更新楽しみにしてます！ (2019年6月16日 15時) (レス) id: 2062434e73 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - コキンちゃんさん» えー！めちゃ嬉しいです！これからもご愛読ください！ (2019年6月9日 0時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
コキンちゃん - めちゃめちゃ好きです！ (2019年6月8日 22時) (レス) id: 53d29c3657 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - あんぱんまんさん» ありがとうございます！なるべく良いペースで更新できるよう頑張りますっ！ (2019年6月3日 19時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ティパ二
| 作成日時：2019年5月29日 16時
