destiny ページ32
.
『わっ、』
外に出ると、昼間とは違って少し肌寒い。
グレーのパーカーを羽織って、コンビニに向かった。
.
『…なんでも、いいのかな』
お弁当の卵焼きが…と、母からおつかいを頼まれた。
卵はたくさん並んでいるけど、どれが新鮮とかわからないから、とりあえず目に付いたそれを取り、レジへ向かった。
.
ビニール袋に入った卵を割らないように。
それだけを考えて家までの道を歩く。
あまり夜に外出しないから、なんとなくこの暗さに慣れていなくて。
…世間知らずもいいほどだった。
おねーさん
後ろから聞こえた、悪寒のする声。
振り向いたらおしまい。そう思った私は、
あ、おい!
後ろから、おい!と叫ぶ声が聞こえる。
走る足音も、徐々に近づいてくるのがわかり、卵なんてどうでもよくなって。とにかく走った。
怖い
ニュースとかで見る、こういう事件の被害者は、こんなに怖い思いをしていたんだと気づいた。
恐怖からうまく足が前に出なくて、必死に走るのに全然進まない。なのに鼓動は速まる。
.
『はぁ……、』
肩で息をする。
立ち止まると、少し冷静になれた。
どこに向かっているのかもわからない。だから今どこにいるのかもわからない。
そんな不安を募らせる中、恐る恐る後ろを振り返ると、
『……っ、』
ほんま、あぶなっかしい
すこし遠くに、
反対方向へ逃げ去る人と、
ポッケに手を入れて、堂々とした態度でこちらに向かう、彼がいた。
『…違う、』
今まで握っていたビニール袋は、綺麗に地面へと落下した。
『違うよっ…、』
頰に、涙が伝う。
それでもぼやけない、私の前で止まるその姿。
「…怖かったんか」
私の涙を見て、拭いてくれるわけでもなく、ただそう呟く。
『…廉の、廉の役目じゃない』
私は首を横に振る。
そんな私を見ても、廉は至って冷静で。
「役目?…なんの話?」
『私を助けるのは、廉の役目じゃない!』
あんな恐怖から助けてくれた人になんてことを。
そんな、恩知らずの私を、
「…お前、助けてもらっといてそれか」
ふわり、優しい香りと、長い腕が包む。
.
749人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ティパ二(プロフ) - 有姫さん» ありがとうございます!3回も!作者はとても幸せです泣頑張ります! (2019年6月17日 0時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
有姫(プロフ) - 最初っからもう3回も読んじゃいました!めっちゃ好きです!なんか涙出てきます!これからも更新楽しみにしてます! (2019年6月16日 15時) (レス) id: 2062434e73 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - コキンちゃんさん» えー!めちゃ嬉しいです!これからもご愛読ください! (2019年6月9日 0時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
コキンちゃん - めちゃめちゃ好きです! (2019年6月8日 22時) (レス) id: 53d29c3657 (このIDを非表示/違反報告)
ティパ二(プロフ) - あんぱんまんさん» ありがとうございます!なるべく良いペースで更新できるよう頑張りますっ! (2019年6月3日 19時) (レス) id: 431cc30fd2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ティパ二 | 作成日時:2019年5月29日 16時