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1話 ページ1

「お兄ちゃん、みてー!お花あったの!
お兄ちゃんにあげるー!」


ふわりとした髪を揺らしながら一生懸命ついてくる妹のA。


正直鬱陶しくて仕方がない。

妹だからなんだ。俺は知らねえ。


妹を無視して寺に戻り、飯を食べてAを風呂に入れ布団に寝かせて外に出た。


夜中の出歩きは禁じられていたがそんなことはどうだっていい。
鬼なんかいるはずがない。


「やあ、坊ちゃん、もう少しこっちにおいで」

嫌な感じがする。
その場から動けないでいるとそいつは影からぬっと出てきて俺の両腕を掴んだ。

「久々の食事だ…
あの寺からする藤の香のせいで食えなかったんだ…」


大きく口を開けたそいつに命乞いをし、寺の子どもを食っていいから見逃してくれと言った。

藤の香を消すから、その後に入ればいいと。

鬼は承諾し、俺は寺まで走り、香を消した。


みんなが寝ている場所をのぞくと、一番扉側にいたAの頬に涙の跡があることに気付いた。

寂しくて一人で泣いていたのだろうか。

そっと小さな妹を抱き上げて寺の床下まで行った。
鬼が境内に入るのを見た後Aを叩き起こした。


A「…んー、ん…ぅ、あ、お兄ちゃん!」


獪岳「しーーっ!
いいか、兄ちゃんと一緒に来たいなら静かにしてろ。
ほら、おんぶしてやるから。」

A「おんぶ!
…あ、でも、夜にであるいたら、こわい鬼がでるんだよね?」


獪岳「馬鹿、鬼なんかいねえよ
兄ちゃんに任せてたら大丈夫だから。
お前はまだ寝てろ。」


A「うん!お兄ちゃんだいすきだよ…」


首元にきゅっと小さな腕を回してすやすやと眠り始めたのを確認して足早に町の方へ進んだ。

夜が明けるまで、香の焚かれた町の路地裏でAを抱き抱えて眠った。


寺にいたやつらは一人残らず食われてしまっただろうか。

まあどうだっていいことだ。



日が昇り、目を覚ますとどうやら街が騒がしい。

まだ眠っているAの頬をひっぱたき、無理やり腕を引っ張って立ち上がらせ、人混みのほうへ歩いた。


どうやら寺の子どもたちのほとんどを寺主が殺したそうだ。
きっと俺たちがいた寺のことだろう。
ハッ、ざまあねえぜ。
盲目なのが仇になったな。


まだ眠たそうに目を擦りながらこちらを伺う視線にぷつんと糸が切れたような気分になった。

もとの路地裏まで引っ張っていって妹を突き飛ばす。

大きな目をまんまるに見開いて今にも泣き出しそうな顔になる。

嫌いなんだよ、その顔。

2話→



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pocky - 面白い!とっても素敵な作品ですね!! (2020年6月29日 22時) (レス) id: 67e63b3be0 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - 読んでる時の感想→「え?え?なんで優しいお兄ちゃんの獪岳が私(夢主)殴ってるの!?作者さん嫌い…いや嘘だけどさ、本当は大好き!!でもどうしてこうなった?あ、最後の獪岳の言葉身に染みる」って感じでうるさかったです…素晴らしいですね(さっきの言葉どうした) (2020年3月23日 2時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
実弥LOVE(プロフ) - 最後の獪岳の一言で私の涙腺が崩壊した。 (2020年2月24日 23時) (レス) id: 3871cda528 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - めっちゃ面白いえ、本当に面白いんだけど!( ゚ロ゚) (2020年2月20日 10時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 続きが見たいです!!! (2020年2月18日 12時) (レス) id: 35ab4fcffb (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2020年2月16日 2時

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