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濡れる水色 『如月緋月誕生祭』 ページ1

いつも通りに練習が終わり、帰路についた。
寝ているであろう弟妹たちを起こさぬよう、そっとドアを開けて中に入った。

静かな廊下に僕の足音だけが響く。
部屋着に着替え終わったため、食堂へ向かい始めた。


『………? 一体なにを………』


食堂へ近付くにつれ、聞こえてきた会話。
海奏たちは寝ていないのですか?

そんな疑問を持ちつつ、食堂のドアを開けた。



パーーーンッ



『!?』

「「誕生日おめでとう、A!!」」

「「おめでとー、お姉ちゃん!!」」



頭上で舞うクラッカーテープに、足元に転がるクラッカーボール。
テーブルの上には、チョコケーキがある。



『これは……どういう………。
海奏たちまで、もう寝ているはずでは………?』


「ヒロト兄ちゃん、成功した!?」

「したした!!」



状況を飲み込めない僕を放って、ヒロトとカズが喜ぶ。
僕の頭に乗っていたクラッカーテープを取りながら、風介が説明してくれた。

今日は僕の誕生日だから、小さい子たちも起きて祝おうとしてくれたと。
先程までの会話は、僕が予定より少し早めに帰ってきたから焦っていたらしい。


こんなことをしてもらったのは初めてで、どうしてもこれが現実なのかと疑ってしまう。
手の甲を軽く抓ると僅かな痛みが走ったので、本当なんだと思った。



あ、ダメだ。




そう思った瞬間に、涙で視界がぼやけた。
泣いているから、悲しいと思ったのだろうか。

海奏が傍に来て、小さな小さな手で涙を掬おうとしてくれた。
そんな彼女を抱き上げ、肩に顔をうずめた。




「いたいいたい………?」

『ううん、違うの。嬉しいの………』





ようやく涙が引っ込んできた時、みんながまた言ったから、
視界がぼやけた。



「「誕生日おめでとう、A!!」」



彼らは、どれだけ僕を泣かせれば気が済むのだろう。





泣きながら、声が少し震えながら、今できる精一杯の笑顔で応える。




『っ……ありがとうございます!』








久しぶりに水色がぼやけた。

それは、幸福が呼んだシアワセ。



2019/9/7

5年ぶりの 『砂木沼治誕生祭』→



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作品ジャンル:アニメ
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蒼乃(プロフ) - 星猫さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!更新は不定期ですが、更新する時は頑張りたいと思います! (2021年9月7日 17時) (レス) id: c9e288890e (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 初めまして!とっても素敵ですね!高評価しました! (2021年9月7日 17時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃(プロフ) - Vermutさん» ありがとぉぉぉぉ!!そう言ってくれて嬉しい!いやいや、受験だもん!僕、更新頑張るからVermutも受験ファイトです!Vermutが戻ってくるまで、これも月光の歌姫も更新しまくってやんよ……!(悪い顔)← とまあ、これはちょっとした冗談で……、ほんとありがとね!! (2019年9月29日 8時) (レス) id: e3feac7888 (このIDを非表示/違反報告)
Vermut(プロフ) - うわぁぁぁんスマホ取られてたせいで見るの遅れたぁぁぁぁ!!!((すっごく素敵な作品だね!!治兄のとこ、本当に泣けて来たよ…!更新ちっともしなくなった私が言うのも何だけど、更新頑張ってねー!! (2019年9月29日 8時) (レス) id: 37d55cd9aa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼乃 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Detectivec2/  
作成日時:2019年9月7日 23時

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