185 ページ35
▽
だが、ここでひとつ疑問。……それを話しながら佐野の目の前まで近づき、彼の右足を狙っていた妖怪の手首を容赦なく踏んづける。私が顔色を変えずにそうしたものだから晴明くんと秋雨が騒がしい。
OBもOBだ。身の程知らずめ。今は私が喋ってんでしょうが。力加減、下手くそだからさ。うっかり骨にヒビ入れたらごめんね。その手は痛いと叫びながら床に沈んでしまう。
えーっと、どこまで話したっけ。あ、そうだそうだ。
「秦中が『一人だけ外に出られる鍵を持った奴がいる』って言っていたでしょ？ 教師か化かし役か、はっきりとは言ってない」
「普通に考えたら教師っぽいよね。もし化かし役なら、僕たちにわざわざちょっかいかけるなんてしないだろうし。そんなリスク背負うかなぁ……」
佐「その辺は泥田たちの結果待ちだな」
生徒が全滅、もしくは鍵を入手できない場合も不合格だ。鍵を持っていたら、向こうが私たちに関わるメリットなんてない。
まあ、卒業生とはいえその道のプロ。学校側が正式に依頼してるだろうし、バイト代くらいは出てると思うけれども。
リスクを課せられてまで接触する……か？ うーん、まだ情報が足りない。闇雲にOBたちとエンカウントするのは良策とは言えない、けど。
ピンポンパンポーン♪
『倉橋・藤平・尾形・小古曽、脱落。残り12名』
「「「…………！？」」」
…………えっ？ 嘘でしょ。
状況とまるで合わない軽快な音が聞こえてきたかと思えば、それはあそこの階段で先程分かれた壱班が全滅したという知らせだった。まだそんなに時間は経っていないのに。
「呑気に話してる場合じゃないっぽいぞ……」
「らしいね。とりあえず適当な化かし役を捕まえて、鍵を持ってる奴を吐かせるか」
「椎名って脅すのとか得意そうだよな」
「嬉しくない。佐野……いや、根っからのサドには言われたくないよ」
富士が凍らせた奴はいつの間にかいなくなっていた。……チッ。思わず出てしまった舌打ち。秋雨の手をニギニギした。テストもだけど、こっちのタイムリミットもある。のんびりはしていられない。
だけど、いざ探すと出てこない。やはり私たちは今じゃない？ 挑発してみよう。
……そりゃ怖いよね、数時間前も私に奇襲かけたのに瞬殺されたんだもん。ビビるのは悪いことじゃないよ。
「ちょ、ちょっと椎名さん！」
出てきた出てきた、大量だ。
晴明くんも秋雨も安心して。
「佐野と富士は手伝ってね」
「マジか」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月10日 14時
