184 ページ34
▽
前科もあり、私の情報は既にOBたちに伝わっているのか向こうは私を早々にターゲットから外す。代わりに矛先が向いたのは富士だった。
お歯黒べったりは天井から現れて、ふりこの反動で腕を伸ばして捕まえようとしたけれど。……ふうん、そういえば化かすプロだもんね。だから私のことを知らなかった、生徒がどういう妖怪かは知らされていない。
富士に近距離戦は駄目。彼は、取り乱す連中とは対照的に落ち着いていた。見た目どおりクールである。特に怯えることもせず、長いひと息。涼しい。お歯黒べったりを凍らせ、動きを止める。
「いっちょあがり」
「さすが雪女……」
「朝までそこで大人しくしてな」
雪女。辞典には、人を凍らせるほど冷たい雪を吐くと書かれている。夏はクーラー代わりになるため扇風機いらず、とか。……ここでふと気づくのは、富士は男なのに雪女? ということ。
本人曰く、それだと妖怪じゃなくてUMAらしい。あのゴリラみたいなのか。話していたら天井から凍ったままのソレが落ちてくる。難なく対処出来たそいつを彼は足蹴にした。
「富士ありがと。私、屋内だとただ怪力なだけで大して役に立てないから助かる」
「……あ、そうか。お前は空気の流れがないところでは妖術使えないんだったな」
「うん。それに……いつ眠りに落ちて晴明くんに継ぐお荷物2号になるかわかんないし。あと、みんなは私が肆班で少し安心してたかもしれないけど……多分、逆だよ」
佐「どういうことだ?」
さりげなく混ぜた嫌味に、晴明くんの「えっ」が聞こえたけど無視。だって他のメンバーはクスッとも笑わないから。これはスルー。
思ったんだけど……私の存在自体、妖怪ホイホイになるかも。このお歯黒べったりは捨て駒かな。一人でも多くの情報を得て、作戦を練るために駆り出された。それ以外、単身でしかける理由が見当たらない。
今は校舎に生徒が散らばっている。OBたちの数は分からないけど、あっちも戦力を分散せざるを得ないわけだ。でも、富士が今一人でなんとかしちゃったでしょ? そうなると、私たちは後回しにされると思う。
「秋雨は
富「なるほどな……。他の階の奴らを捕まえてから総力戦を仕掛けた方が、向こうには都合がいい」
数で押し切れるからね。
.
34人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時