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前科もあり、私の情報は既にOBたちに伝わっているのか向こうは私を早々にターゲットから外す。代わりに矛先が向いたのは富士だった。

お歯黒べったりは天井から現れて、ふりこの反動で腕を伸ばして捕まえようとしたけれど。……ふうん、そういえば化かすプロだもんね。だから私のことを知らなかった、生徒がどういう妖怪かは知らされていない。

富士に近距離戦は駄目。彼は、取り乱す連中とは対照的に落ち着いていた。見た目どおりクールである。特に怯えることもせず、長いひと息。涼しい。お歯黒べったりを凍らせ、動きを止める。



「いっちょあがり」

「さすが雪女……」

「朝までそこで大人しくしてな」



雪女。辞典には、人を凍らせるほど冷たい雪を吐くと書かれている。夏はクーラー代わりになるため扇風機いらず、とか。……ここでふと気づくのは、富士は男なのに雪女? ということ。

本人曰く、それだと妖怪じゃなくてUMAらしい。あのゴリラみたいなのか。話していたら天井から凍ったままのソレが落ちてくる。難なく対処出来たそいつを彼は足蹴にした。



「富士ありがと。私、屋内だとただ怪力なだけで大して役に立てないから助かる」

「……あ、そうか。お前は空気の流れがないところでは妖術使えないんだったな」

「うん。それに……いつ眠りに落ちて晴明くんに継ぐお荷物2号になるかわかんないし。あと、みんなは私が肆班で少し安心してたかもしれないけど……多分、逆だよ」

佐「どういうことだ?」



さりげなく混ぜた嫌味に、晴明くんの「えっ」が聞こえたけど無視。だって他のメンバーはクスッとも笑わないから。これはスルー。


思ったんだけど……私の存在自体、妖怪ホイホイになるかも。このお歯黒べったりは捨て駒かな。一人でも多くの情報を得て、作戦を練るために駆り出された。それ以外、単身でしかける理由が見当たらない。

今は校舎に生徒が散らばっている。OBたちの数は分からないけど、あっちも戦力を分散せざるを得ないわけだ。でも、富士が今一人でなんとかしちゃったでしょ? そうなると、私たちは後回しにされると思う。



「秋雨は動物妖怪(見たまま)で、富士と私に無策で近づくのはNG。佐野の情報は漏れていない。人間がいる(晴明くんって)ハンデを差し引いても、この班は面倒くさいと思う」

富「なるほどな……。他の階の奴らを捕まえてから総力戦を仕掛けた方が、向こうには都合がいい」



数で押し切れるからね。

.

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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時

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