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今は友達だよ? しかし最初は兄がやむなく学校を休む場合の連絡手段だった。まあ結局は一教師と生徒だし。家族または入学前から顔見知り……ならまだしも、授業でしか関わりがないのに個人的に連絡先を持つのはあんまり進んで行うことじゃない。


富士も、私たちが兄妹だと知ったときは顔は全然似ていないみたいなことを言ってたっけ。そうそう、その反応も見飽きたからオープンにしてないの。わざわざ伝えることでもないしなぁ。

……と、ここでツッコミを入れたのは秋雨だ。そういや、この面子で朱鷺先生=私の兄貴と知らないのは彼だけ。けれどあいつはできるだけ平和に日々を過ごしたいから、その点に関して外に言わないであげて。



「お前らも、よろしく〜」


「……。なあ、今更だけど。富士っていつも女性の格好してるけどアレは趣味なん?」

「さあ……僕も聞くタイミング逃して……」



目の前でコソコソ話やめなさいよ。気になるなら聞けばいいじゃん。せっかく富士から声かけてきたっていうのに……。知りたいなら、秋雨みたいにストレートに言えばいい。

彼は、佐野がさっき言ったことをそのまま訊ねる。富士は特に機嫌を悪くすることなく教えてくれた。



「ただ女装好きなだけだよ。あっ、別に男が好きなわけじゃねーし。オネェでもねーから」

「なんでまた女装趣味に? 似合ってるけどさ」



きっかけは中学時代。クラスの女子から、化粧の練習をするから顔を貸せと言われたらしい。わかる、富士の肌綺麗だよね。晴明くんになんで知ってんのと言われたが、え? 見たことあるから。

フルメイクの富士も美人だけど、素顔も結構イケメンだよ。それで、えっと。話を戻す。化粧をしたら『似合うじゃん』。女子から制服を借りて着替えてみたら……大好評だった。そしてハマったわけだと。


化粧が映える顔。それで思い浮かぶのは、晴明くんの中では神酒らしい。「なんだか神酒先生と気が合いそうだね」……富士もそう思っていたのか、ゆくゆくは(ミキティー)と女装バーを開きたい。

そんな野望があったのか。…………ん?



「ゆっくりお話してていいのかしら?」

「「! う……うわああああ!!」」

「あ?」



せっかく楽しかったのに。私と富士の背後に気配。向かい合わせて話していた面々は悲鳴をあげるが、夢語りを邪魔されて富士の眉間が寄った。

白い着物に、目と鼻が無い女妖怪。晴明くんの妖怪辞典には、お歯黒べったり。歯が黒い妖怪らしい。

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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時

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