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晴明くんは生徒に甘い。それは言えてると思う。
神酒曰く、口を滑らせて鍵を在り処を私たちに教えてしまいそう。だからなんの情報も渡さず、生徒側に放りこんだ……と。更には、彼は赴任して数ヶ月経つが本格的に化かされたことがまだないらしい。
今後も妖怪の生徒を相手に教師を続けるのなら、一度きちんと化かされてみたら……ねぇ。晴明くんは怖いと言いながらベソベソ泣き出す。ウザいから泣くな。
試験の概要に合格の条件、晴明くんがここにいる理由。今の時点で気になること……あとは。他に質問はないかと言われ、倉が控えめに挙手。
「あの……もしも全員捕まったり、鍵を見つけられなかったらどうするんですか?」
『あぁ、なんてこたぁない。夏休みの前半が補習授業になるだけだ』
……あ゛っ。そういえばそんなことも鹿島が言ってたじゃん。風呂の心配ばかりですっかり忘れていた。
そうだよ、私なんのために林間学校を出席したのさ。二年連続で夏休みの半分を補習で潰さないためでしょ! 無理、絶対無理。昨年は体育だったから何とかなったけど、座学もある化け学を全て起きて真面目に机に向かう自信なんてない。死んじゃう。
『嫌ならば、お前たちの妖術や特技を生かして逃げ切ってみろ。制限時間は朝日が昇るまでだ』
私よりテメェらの方が鬼だよ。
今は使われていない校舎のはず。なのに、普段聞き慣れた音がみんなの思考をリセットしてしまう。はぁ……夏休みのためにもやるしかないね。
『さあ、開幕のチャイムが鳴ったぞ!! 化け学期末テストの始まりだ!! この学校から脱出してみろ!!』
古い校舎だからか、校内放送のスイッチが切られたときにはブチッて聞こえた。後は口出しせずに試験を見守るってことらしい。……とりあえず秦中から聞いた内容を簡単にし、泥田が繰り返す。
この旧校舎は、百鬼学園のOBたちが化かしてくるお化け屋敷と化している。私たちは出口の鍵を探し、夜明けまでに一人でも校舎から脱出すれば合格らしい。
「かたまってても仕方ない。グー・チョキ・パー・ハートの肆班に分かれて探索しよう。時間もないし行くぞ、ジャーンケーン……」
ポンッ。……何度か繰り返した。17人いる為ひとつだけ五人班になるが、これじゃ永遠に終わらない。同じ手が四人揃ったところから抜けたら?
それからグーの壱班とパーの弐班が決まった。残る手はチョキとハート、決まっていないのは担任含めて9人。
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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時