180# 本番はこれから ページ30
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知らない奴が、断りもなく体に触れてきたら誰だって嫌でしょうが。私はそういう感覚が他の人より鋭いのだ。ま、世話のやける兄たちがいるしね。
とばっちりを受けないのはもう無理、ということで護身術は心得ている。種族的な理由で体も丈夫。自分より大きい不良が複数人で絡んできても、視界や動きを制限されなければ何とかできるだろう。
「ひとつ疑問なんだけど……なんで、歌川さんに教えてあげなかったの? 結果的には卒業生の仕業でテスト関係だったけれど、椎名さんは事が大きくなる前から異変に気づいていたってことだよね?」
「言ったらダメかなって思ってた。だから、濁して忠告した。夜の学校は不気味だよねって、暗いから気をつけてって」
「えっ、わざとってこと!?」
「うん。弐組の友達に林間学校のこと聞いたら、テスト内容は口止めされてるらしくて。でも崖登りって、そんな秘密にするようなこと?」
つまりヒントは、私たちの周りに存在していた。
睡魔の有無で私の頭の回転率は全く違う。謎の視線のこともあって、何か裏がありそうとはうっすら思ってたの。でも、それがこれっていうのはみんなと同じタイミングで知ったよ?
だから彼ら……弐組は、林間学校の後に元気がなかった。全員合格、または全員不合格。あの顔から察するに、落とすと相当ハードな補習なんだろう。
「それで晴明くんはなんでここにいるの? ハブられてんの? 秦中にいじめられてる、とか」
『なんで俺なんだよ』
「ハッ! そ、そうだった。あの〜、僕は一体どうすればいいのでしょうか……。というか何故僕も生徒側に……」
『安倍先生は……あー、アレだ。まぁ…………担任として、生徒をしっかりサポートしてくださいってことで……』
え……なんか、今フラグ立った気がする。邪魔だからって生徒側に押し付けようって魂胆が丸見えだ。泥田を筆頭に何人かがスピーカーに向かって怒鳴りつけている。晴明くんも教師なんだから入れてあげなよ……。
邪魔なのはこっちも同じだ。始める前から不利なハンデを背負うことになっちゃうじゃん。やいやい抗議すると、秦中は『うるせえ、返品不可じゃ』と遂に本音をこぼした。
「くそっ、いらない担任を売りつけやがって!! 悪徳商法だ!!」
「よってたかって僕を邪険にせんといて〜……あっ、そして夕方言ってた『色々頼む』ってコレのことか……!!」
…………? 私は聞き逃さなかった。
やっぱり、種は撒かれている。
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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時