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ひとりでの入浴を済ませたら、あとは消灯時刻まで自由時間。
昼間に寝たせいか、それとも……。いつもは21時にはベッドに横になる私にしては起きている方だと思う。睡魔は感じていたけれど耐えられないほどではなかった。
「ねえねえ。夏休みのどこか、みんなで海に行かない？」
国ちゃんの口からこんな言葉が出たら目も覚める。寝てる場合じゃない、いや寝てるフリが正しかったか？ でももう今から演技するのは無理がある。
私のことで彼女が知るのは心の傷のみ。まさか、全く別の理由で物理的に刻まれているものがあることは知らない。脳みそをフル回転させる私の前では、他の女子たちもすっかり乗り気だ。
今年は晴明くんの
断ったらKYかな……。休み明けとか、ハブられちゃう……？
「Aちゃんはどうかな、海」
「え。あ、えっとー……」
なんの裏もない、純粋な問い。目を見れば国ちゃんに悪意のないことなんてすぐに分かる。……だとしても。服の下を不特定多数に見られるのは、まだ怖い。
それにみんなだって。みんながよそよそしくなったら嫌だよ。せっかく仲良くなったのに。
葛藤する私。それに助け舟を出してくれたのは、隣同士で座っていた紅子だった。
「…………、悪いな歌川さん。Aは泳げないんだ」
「え、そうなの？」
「う……うん、ごめん」
「やだ、謝ることないわ。こっちこそ知らずにごめんなさい。Aちゃんは優しいから、もし断ったら気を遣わせるとか思わせたよね」
助かったけど心が痛い。別の意味では思ってた、かも。
けれど誘う方も誘う方で。泳げないなら来なくていいとは言えないし、言う子たちでもない。海での遊びは泳ぐだけじゃないと、すごく言葉を選んで再度誘ってくれた。うーん……。
迷ったけど、今度はちゃんと自分の意思を伝える。来月の予定に関してはなんとも言えない。だからもし、みんなの都合と合えば行きたいなって。国ちゃん以外も嬉しそうな顔になる。
「いいのか？ 昨年の水泳、全休してただろ」
「まあ、行く方向でなんとかする。さっきは助けてくれてありがと」
「……本当のところどうなんだ。泳げんの？」
「それは人並み。泳ぐより、水着になるのが嫌なだけ」
休暇に胸を踊らせるみんなを見ながら、小声でそんな話をした。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月10日 14時
