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短針は伍、長針は拾弐。時間になったら全員揃ってるのを教師たちが確認して班ごとに夕食作り。メニューは焼きそばだ。これも柳田のせいで、佐野班の焼きそばは爆発して体育館の屋根が吹っ飛んだ。
さっきから食べるか寝るかしかしてない気がする。崖は運動したうちにも入らないし。あとは風呂だけなのにエネルギーチャージしすぎじゃない? 太る〜って言いたいとこだが、私は太らない体質のためその心配はない。それよりお腹いっぱいになると眠くなっちゃう。
「ずっと、寝てたよね……?」
「そんなんで夜寝れんのかよ」
「心配ナッシング。ご飯のときもデザートは別腹って言うでしょ。それと一緒」
ま、胃はひとつしかないから厳密には同じ腹なんだけどさ。自分の発言にマジレスなんて寒いことはしない。
昼同様に完成した班から集まっていただきます。私のところのメンバーは私と豆、富士、秋辺、倉、藤平で六人。うちのクラスは26人編成だ。そのため、6人班と7人班をふた組ずつ作っていた。
夕食後は歯を磨き、教室で少しの休み時間。すっかり外も暗くなって、19時半になったら入浴の時間だ。周りの女の子たちが時計を見て、それぞれ準備を始めるのが視界の端に映る。
しかし、私の目と手はスマホのゲームに向いたまま。その場から動かないので国ちゃんに声をかけられた。
「あー……。私、みんなの後に入るから。秦中にも許可とってる」
「?」
「えっと、女子の日……っていうか」
同性相手の場合、こう言えばこれ以上誘われることはない。正直真っ赤な嘘だ。でもこれが最も追求を避けられる。万が一にも、なぜ秦中なのかと訊かれたら「妻子持ち」と返答も準備していたが出番はなかった。
今年は水泳の授業もなく、彼女たちが私の嘘を確かめる術はほぼ無い。運が良かった。じゃあいってらっしゃ〜い。手を振って送り、ここには私だけとなる。……よし、クエストクリア。
「なんか、変なんだよなぁ……」
足音と話し声がだんだん遠くなり、ついには聞こえなくなる。みんながいたからだと思っていたが違うっぽい。スマホを置いて天井を見上げる。次は窓、そして廊下。特におかしなものは見当たらない。
それなのに……、誰かに見られているような。夜の学校でぼっち、感覚が研ぎ澄まされているのかもしれないけど……視線や気配に敏感なのは元からだ。
「遼太が元気ない理由、ね」
それは、身内での鹿島の呼び方だ。
夜は静かに過ごしたいのに。
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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時