171# その間のこと ページ21
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…………。仮眠の割にはよく寝た気がする。
瞼はまだ開かない。徐々にはっきりする意識の中で自分の体が横になっていることに気づいた。頭はクッションのようなものに沈んでいる。とりあえず体を起こす。んー……ここどこ?
「あっ、Aちゃん起きた! 紅子ちゃーん、」
「どうした歌川さん。……って、お。ようやく目覚めたか」
微睡む視界。次第にピントが合う。声が聞こえた方を振り向けば、国ちゃんと蓮浄さん、それに紅子が私を見下ろしていた。もしかして……寝過ぎちゃった? それにはYESというように向こうは首を縦に振る。
今の時刻を聞こうとしたが、起きて早々にあくびが溢れる。反射的に眠いとこぼしたら「二時間以上も寝てたのに?」と国ちゃんに言われた。マ? そんなに時間経ったのか。
で、ここは? 外じゃないね。なんか教室みたい。
「全員、崖を登り終えた後。秦中が、私や佐野たちにお前を起こすように言ったんだが……泥田が耳元で叫んでも起きなくてな」
「ここは百鬼学園の旧校舎だそうよ。今夜はこの校舎に泊まるんですって。ちなみにわたしたちがいるのは参年弐組の教室で、夜は畳の上にお布団を敷いて寝るらしいわ」
「椎名さん。これ、秦中先生から配られたプリントです」
「あ、ありがとう蓮浄さん」
一番上に行程表と明記がある。えーっと? 17時に体育館に集合、晩ご飯作りをするのだと紅子が教えてくれた。
元々は教室ということもあり、黒板の上には時計がかかっている。現在は16時半を少し過ぎたところ。じゃあそろそろ移動する時間だね。その後は少し休んで入浴。男子は1F、女子は2Fね。了解。
お風呂があることは事前に鹿島に聞いていた。だから私は先手を打ったのだ。そういえば鹿島の奴……林間学校から帰った夜に電話したら声に覇気がなかったな。崖を登れないくらい軟弱者だったか? 何か引っかかるけど寝起きの頭は大して働かない。
「トイレってどこ?」
「手洗い場は中庭の奥しか使えないって」
足元には秋辺が。そうなんだ、教えてくれてありがとう。なるほど、現在は使われていないから全ての場所に水は通っていないのか。
口元を両手で遮って再度あくび……喉、渇いたわ。着替えを入れている鞄は教師が先に運び込んでくれたとか。自分のものから水のペットボトルと、目薬を探す。
「よし、体育館向かうかぁ〜……」
水分補給と目覚まし完了。背伸びをしながら立ち上がった。
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作者名:東雲れーた | 作成日時:2024年3月10日 14時