169# 代償 ページ19
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昼食と片付けの後は化け学の試験。森を抜けると、首が痛くなるほどの崖が視界いっぱいに入った。今からこれを登るらしい。
化け学は文字のとおり、化かす学問。つまり座学より実習授業が圧倒的にカリキュラムでは多い。ありとあらゆる場所やシチュエーションで妖怪としての能力を発揮させることが求められる。……って、前に朱辛くんが言ってた気がする。
「ふわぁ……、眠い」
「……おい、ガクガクすんな。そのまま倒れる気か？」
「うー…………うん、うん」
佐野の声がよく聞こえない。
朝は普通に登校して、キャンプ場に移動したら荷物を置いてカレー作り。普通に考えたらそろそろ仮眠の時間だ。やばい、眠たくてしょうがない。目をゴシゴシするけど効果はなかった。
こうなったら崖なんてさっさと登って少し寝るしか……。正直、就寝まで持つ気がしない。二度目のあくびが溢れる、涙出た。崖登り。多分私は前田や柳田と同じ部類に見られてるんだろう。ご名答〜。
体を一度も触れさせずに登るなんて訳が無い。妖術も出番は無い。「私」という妖怪の体質だけで楽勝だ。ただまあ、すべてがプラスに働くものではない。力が強いとか空中を自在に動けるとか、羨ましがられる長所の裏には「過眠体質」という超絶いらない副作用がある。
それでも私をずるいと思う？ 過眠体質を直せるのなら、こちらは喜んで力も何も手放すよ。崖に手をかけたり、それぞれで乗り越えようとする彼らを一瞬で追い抜く。
「秦中先生〜」
「なんだ」
「終わったら起こしてください」
元の大きさに戻った大田の手のひらから、生徒の様子を見てる教師陣。その高さまで浮かんだら伝えておく。寝るなとかなんだの声は聞こえたけど無視だ。ちょっともう本当にダメそう。
意識が途切れたらまっさかさまになる。当然、寝てしまうとマイナスに全振りされてこの状態も妖術も使用不可。いくら体が丈夫な鬼妖怪でも頭から落ちたら無事では済まないだろう。あー……そろそろ考えるのも限界だ。
地面に足がついたのが先か、瞼が閉じたのが先か。分からない。
..
Aの次に登頂できたのは佐野と、彼がおんぶしていた狸塚。2番目だったとはいえ追い抜かれてから10分は経過していた。
二人は驚く。同級生が倒れていたからだ。えっ……死んでる？ 佐野は内心でそんなことを思った。泥田と座敷が到着するのには構わない。狸塚は駆け寄ってしゃがみ、大声で名前を呼ぶけれど反応は無い。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月10日 14時
